(原題:Halloween)
2018年/アメリカ
上映時間:106分
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
キャスト:ジェイミー・リー・カーティス/ニック・キャッスル/ジュディ・グリア/アンディ・マティチャック/ウィル・パットン/他
1978年に公開された、スプラッタ・ホラーの金字塔「ハロウィン」の40年後を描いた続編。
初代のキャストが再び参加し、製作総指揮には産みの親であるジョン・カーペンターが名を連ねます。
いやね、元々ホラーにはそこまで詳しくないし、スプラッタ系映画を好んで観ないし、本作の存在は知っていても観たことはなかったんですよ。
ついでに言えば「ジェイソン」も「エルム街の悪夢」も、知ってはいるけど観たことは無いんです。
で、ホラー映画の最新リメイクでは「レザーフェイス」でちょっと懲りてたのもあり、正直あまり魅力を感じなかったものでして。
いざ観てみればそれなりに面白いなと感じるものの、やはりスプラッタ・ホラーはニッチな趣向の映画だなと再確認した今日この頃です。
さっくりあらすじ
ジャーナリストのアーロンとディナは40年前のハロウィンに起きた凄惨な連続殺人事件の真相を追って、”ブギーマン”ことマイケル・マイヤーズが収監された精神病院を訪れる。
40年間、一言も話さないマイヤーズと対面し、声をかけ挑発をしても彼は何も反応することは無かった。
次に事件の唯一の生き残りであるローリー・ストロードの元を訪れ、質問をするも彼女は「マイヤーズは人知を超えた存在だ」と繰り返すばかりで話にならなかった。
そんな折にハロウィンを控え、マイヤーズを別の精神病院へと移動させる途中に事故が発生し、マイヤーズの行方も分からなくなってしまうのだが、、、
精神病院で過ごすマイケル・マイヤーズ
その素顔を伺うことはできない
ローリー・ストロード
過去の事件の唯一の生存者
そしてハロウィン当日
”ブギーマン”が再び現れる
不純物
恥ずかしながら名作と評される過去作をよく知らず、本作で初めて触れた”ブギーマン”の存在ですが、なかなかにインパクトがあるキャラクターですな。
素顔は拝めず、喋ることもなく、屈強な肉体と怪力で不条理に人々を惨殺する姿に感じるのは純粋な”恐怖”そのものです。
ただひたすらに逃げまどうしか手立てが無く、なおかつ神出鬼没に現れるブギーマンの影に落ち着く暇も無く、ハラハラソワソワとした焦燥感が尽きないような、むず痒い圧迫感がありますね。
そんな理不尽な暴力を具現化したような、人々がイメージする恐怖の象徴であるブギーマンの存在感はピカイチです。
対する、ブギーマンを殺すことに執念を燃やす初老の女性・ローリーもまた素敵。
誰の力を借りるでもなく、自分なりに努力を積み重ね、様々な罠や武器を揃える姿勢は”狂人”と言っても良いでしょうか。
他者の意見をものともせず、狂信的にブギーマンの復活を予見する姿勢にはイカれた魅力が垣間見えます。
が、そんな2人の宿命の対決が軸になるであろう物語に様々な蛇足が付いて回ります。
純粋な悪vs妄信的な狂気という美しい構図に対して、不純物と言っても良いほどに無駄な構成が引っ掛かるわけですな。
最初のジャーナリストの件からして、残酷な惨殺シーンがちょっとくどいなとは思いましたが、全体的に尺を取るための蛇足が目につきます。
一応はヒロイン相当になるであろう、ローリーの孫・アリソンですら存在感が薄めなので、それ以降のキャラはぶっちゃけいてもいなくても変わらないと思うんですよね。
アリソンの彼氏とか、その友達とか、ヒロインに近しい人を犠牲にして恐怖感を煽る手法は理解できますが、それだと見境無く殺人を繰り返すブギーマンの概念と矛盾しているようにも見えますし。
止めることのできない圧倒的な暴力と、全く思考の読めない殺人衝動が恐怖の礎となるだけに、こういった蛇足で怖さの純度が下がるのが実に勿体ないかなと思います。
そして、いざブギーマンが暴れだしてからもツッコミどころのオンパレード。
そもそもブギーマンの復活を信じ、40年も準備したわりには内容が微妙なローリーの対策。
屈強ながらも基本的には接近戦(ナイフ)をしかけるブギーマンに対し、あまり距離を取ろうとしない作戦。
いざ銃を打ち込んだり、車で轢いたりしてもトドメは刺さない不思議。
などなど、映画的なお約束を踏まえた上でも不自然さの方が印象に残り、名作を謳うには演出が少々お粗末な感は否めません。
ローリーとブギーマンという稀有な狂人が輝いているだけに、それに相応しい舞台を作れなかったことが悔やまれますな。
まとめ
言うてもね、トータルで観れば結構面白かったけどね。
40年振りに作られた続編というのは極めて珍しいものですし、色々と気になるところはあれど、元の作品が持つ魅力は十分に伝わってくる内容です。
良く言えば原作に忠実であろう演出も、現代的なスプラッタ感覚で言えば平凡だとも思います。
やはり、数々の殺人鬼の元祖とも言えるブギーマンの存在感と、それに負けない個性を発揮するローリーという2人のキャラが光る作品であり、良くも悪くもそれ以上ではないのかもしれません。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。