(原題:The Dark Tower)
2017年/アメリカ
上映時間:95分
監督:ニコライ・アーセル
キャスト:イドリス・エルバ/マシュー・マコノヒー/トム・テイラー/クローディア・キム/フラン・クランツ/他
スティーヴン・キングの長編小説を映画化したファンタジー・アクション。
原作はキング氏が自らライフワークだと語るほどに壮大な物語であり、「ドラゴンタトゥーの女」のニコライ・アーセルが監督を務めます。
2010年代あたりから活躍目覚ましいイドリス・エルバが主演に抜擢され、彼の下積みの苦労を知れば、ようやくここまで来れたのも嬉しい限り。
元ネタを知らないままに鑑賞しましたが、予備知識が無くともそれなりに楽しめます。
ただし、長編小説を映画化しただけに、どこか一部を切り取っての物語にはなっていると思われます。
よって全て読破した原作ファンがどう感じるかは、何とも言えないところです。
さっくりあらすじ
消防士だった父を亡くした少年・ジェイクは奇妙な夢に悩まされており、母と義父により療養所に送られそうになるも、すんでのところで脱走した。
夢の内容を手掛かりに、廃屋に隠された機械の扉を超えると”中間世界”へと辿り着き、そこで夢に出てきたガンスリンガー・ローランドと出会う。
中間世界にある”ダークタワー”は世界を守っており、”黒衣の男”ことウォルターは何人もの子供を誘拐してはタワーへと送り込み、破壊しようと目論んでいた。
一方で中間世界に迷い込んだジェイクを確認し、ウォルターは彼こそがタワーを破壊する資質を持つ子供だと気が付くのだが、、、
異次元に迷い込んだ少年・ジェイク
最後の”ガンスリンガー”ローランド
”黒衣の男”ウォルター
意外と魅力的
元が長編小説だけに、相当な駆け足で描かれたであろうことは想像に難くありませんが、あまり原作に詳しくない筆者からすれば結構面白かったかなと。
まぁ独特の世界観を構築するだけで精一杯という感は否めず、やはりファンからすれば認めがたいであろうところも否定できませんが。
ジュブナイル風な味付けに関してはどうにもね、否定的に捉える人の方が多いんじゃないかな。
原作においての、どの辺りを映画化したのかすら分かりませんが、それにしてももう少しゆっくりと2~3部作にしても悪くはなかったのかなとも思います。
そもそも95分て短いしね。
壮大な物語性を感じさせるだけに、ちょいと駆け足が過ぎるのがもったいないところです。
物語としては”ガンスリンガー”というロマン満載のキャラクターがいながらも、どちらかと言えば少年・ジェイクの方にスポットが寄っている印象。
世界の安定を司る”タワー”を巡っての攻防が描かれるわけですが、その鍵となるジェイクにインパクトが無く、何とも微妙な雰囲気。
かといってガンスリンガーと黒衣の直接的な戦いは終盤までおあずけ状態なので、物語としての起伏には欠けているような。
退屈と言うほどでもないですが、盛り上がりに欠けるのもまた事実。
明らかに「IT」を意識したような演出も嫌いではないですが、どうにも纏まりに欠けているようで、いまいち素直に楽しめません。
ついでにタワーに関する重要性も多くを語るわけでもなく、「壊れたら世界が破滅」程度のザックリした説明で終わってしまうので、ここも消化不良。
映画としてのバックボーンがボヤけているだけに、アクションしか見所が無いように感じるわけで、薄っぺらい作品になってしまう最大の原因と言えるでしょう。
なので、見どころとしてはガンスリンガーことローランドのリボルバー・アクションと、最後の闘いの2つに絞られます。
やはりオートマではなく、リボルバーにはロマンがありますな。
超絶素早いローディングといい、ファンタジックでマニアックな銃撃戦の演出は個人的にツボです。
また演じるイドリス・エルバの渋みもあり、非常に魅力的でカッコいいキャラクター性は素晴らしいもの。
悲しみと怒りを背に戦う姿は実に魅力的なものではないでしょうか。
対する、黒衣の男ことウォルターを演じるマシュー・マコノヒーも存在感を発揮。
漂うセクシーさ、危うさ、そして野心など、なかなかに印象深いキャラクターかなと。
超能力というか妖術というか、強力な銃撃に対する戦い方も結構面白かったです。
まとめ
退屈な映画ではありませんが、記憶に強く残っているのはガンスリンガーと黒衣の男だけと、まぁそういう作品なんでしょう。
映画としては丁寧さに欠けていますし、結局は2人の俳優の頑張りで何とか及第点に届いているという感じで、他のキャスティングであれば大いにコケていた可能性もあったと思います。
それを踏まえても独特の世界観や演出など、少なからず興味深い部分がありますし。
オススメするほどではないにしろ、ファンタジー・オカルト・ガンアクションが好きであれば観て損は無いでしょう。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。