ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密


(原題:The Founder)
2016年/アメリカ
上映時間:115分
監督:ジョン・リー・ハンコック
キャスト:マイケル・キートン/ニック・オファーマン/ジョン・キャロル・リンチ/リンダ・カーデリーニ/B・J・ノヴァク/他

 




 

マクドナルドを世界的大企業にのし上げた立役者、レイモンド・アルバート・クロックの半生を描いた伝記的ドラマ。

 

さて、みんな大好きマクドナルドですが、その起源を知らない人って結構いるんですよね。

世界で3万店舗以上を誇り、年間15億食を販売する超巨大フード・チェーンであるマクドナルドですが、その起源はカリフォルニアでマクドナルド兄弟が始めたホットドッグ屋から始まります。

その後の商売は上手くいかず、一度閉店した後に始めたハンバーガー屋が大ヒット。

工場生産方式の調理に、スピードに重きを置くサービスシステムは大反響を呼び、今現在のハンバーガーの原型となったそうです。

 

そんなマクドナルド兄弟の情熱と、それを売り物にしようと考えたセールスマンと、その行く末を描いた本作は間違いなく傑作だと思います。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

1954年、売れないシェイク用ミキサーのセールスマンであるレイ・クロックは妻の心配を他所に、上昇志向に溢れる野心的な男だった。

そんな彼の元にドライブイン・レストランから大量の注文が入り、どんな店なのか気になったレイは現地へと向かう。

彼が目にしたのはフードとサービスの質が極めて高く、なおかつ低コストで食事を提供できるレストランであり、そこで閃いたレイは創始者のマクドナルド兄弟へと挨拶へ向かう。

兄弟のアイデアと、様々に工夫された調理システムに感動したレイはフランチャイズ・ビジネスを持ち掛けようとするのだが、、、

 

 

 

 

 

売れないセールスマンのレイ
ハンバーガー屋に感銘を受ける

 

マクドナルド兄弟による
徹底した品質管理が重要

 

従業員の動線を意識
限界まで無駄を省く

 

 

 

 

 

非公認

まず、マクドナルド本社は非公認としているらしいですが、決して否定しない姿勢は尊重してあげましょう。

 

しがないセールスマンの手腕が片田舎のハンバーガー屋を瞬く間に全米へ進出させ、果ては世界有数の企業へと昇りつめました。

この奇跡的な大成功までの道のりを描いた本作ですが、実際に映画化するにあたり、トラブルを避けるため大勢の弁護士も参加したんだとか(笑)

 

単なる成功秘話を描くではなく、のし上がった元セールスマンを悪く描くでもなく、極めてバランス良く作られた脚本は法的なリスクを踏まえた上での判断でしょうか。

結果的に限りなく脚色の少ない、事実に基づいた物語になったのだと思います。

また、会社にとって明らかに都合の悪そうな部分を否定するでもなく、恐らくは実際にあったのであろう事実の描写を黙認したマクドナルド本社の姿勢にも好感が持てます。

 

 

物語としては、マクドナルド兄弟の画期的なアイデアに感動したセールスマンのレイが、やや強引にフランチャイズに踏み切るという流れ。

当時のドライブイン・レストランの描写を見ると、適当に敷地内に駐車した車の元へ従業員が注文を取りに行き、料理を車内へと届ける仕組みのようですね。

創業期のマクド兄弟のシーンでは店舗カウンターへと足を運んでもらい、そこで支払いを済ますという準セルフサービスのようなシステムが反発を招いたようにも見えます。

 

しかしマクド兄弟が考え抜いた、徹底して無駄を省き、質を上げる調理システムの描写は非常に興味深く面白いもの。

限界までメニューを絞り、ハンバーガーのクオリティで勝負する。

俯瞰的なキッチンの配置を地面に描き、何度も何度も動線をシュミレーションしては修正していく。

皿にのせた料理を提供するのではなく、紙で包んで提供する。

今では当たり前の様なシステムも、当時いかに画期的だったのかが非常に分かりやすく演出されます。

 

そして、徐々に顧客の理解を得られるようになると状況は一変し、行列のできる繁盛店へと変わっていきます。

とにかく速い商品の受け取りと、何より美味しそうなハンバーガーの品質、所狭しと場所を取り笑顔で食べる人々の姿。

古き良き、というには安易かもしれませんが、恐らく現代では絶対に見れないであろうお客様の”満足する姿”にはセンチメンタルな感動が湧いてきます。

本当に、ほんっとうに微笑ましい素敵な光景なんですよ。

 

 

しかし、そこから物語は一転し、闇の部分となるドラマが展開されます。

情熱と責任を持って、品質低下を何よりも危惧する兄弟。

画期的なシステムを流用し、大儲けを夢見るレイ。

これが世の中の本質を表すようなストレートな事実であり、成り上がるという目標に向けての道筋でもあるわけですな。

 

被雇用者の立場であれば、間違いなくマクド兄弟の方に寄った視点で観ることになるでしょうし、経営者であればレイの考え方に共感を得ることでしょう。

どっちが正しい、正しくないの尺度ではなく、世を席巻する資本主義経済の何たるやが良く分かる物語と言わざるを得ません。

 

 

そんなレイ・クロックを演じるマイケル・キートンが、非常に素晴らしい演技で物語を盛り立てます。

決して悪人ではなかったであろう彼が、マクド兄弟の考えたシステムに感動した彼が、何を以てこういった結果を生んだのか?

 

道徳的な考え方を捨て、売り手が最も考えるはずの”商品の価値”を捨て、グローバリズムを突き進み大成功を収める。

そして他業種も含め様々な企業が、成功したビジネスモデルとして真似をし始める。

彼が行った偉業の数々は、果たしてどう評価されるべきなのでしょうか。

個人個人で色々な意見が割れそうな、非常に面白い点だと思いますね。

 




 

 

まとめ

事実に基づく物語として、社会派な近代経済史のドラマとして、間違いなく傑作です。

人が人に接する際の道徳的規範だけではなく、社会性を教える為の教材として、高校や大学で取り入れても良いのではと本気で思います。

 

良くも悪くも、ここまで包み隠さずに暗部まで描いた映画は極めては稀有なもの。

美談では終われない世の中の真実を知る、良い機会だと思います。

 

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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