(原題:The Little Hours)
2017年/カナダ・アメリカ
上映時間:91分
監督:ジェフ・ベイナ
キャスト:アリソン・ブリー/デイヴ・フランコ/ケイト・ミクーチ/オーブリー・プラザ/ジョン・C・ライリー/他
中世ヨーロッパを舞台に、修道院で巻き起こる様々なトラブルを描いたブラック・コメディ。
もう邦題からしてどうかと思う名前の作品ですが、実際にカトリック連盟から「正真正銘のゴミ」だとお墨付きをもらった傑作だとも思います。
前もって伝えておきますが、キリスト教を信仰する方は鑑賞は止めましょう。
マジで。
何でこんな映画を観たかというと、「ダーティー・グランパ」でハートを鷲掴みにされたオーブリー・プラザが出演しているから。
アイルランド系とプエルトリカンの血を継ぎ、その独特な顔立ちとエキゾチックな魅力と、コメディアンから始まった豊かな演技力が持ち味の彼女。
今回も期待通りの素晴らしい存在感で魅せてくれましたよ。
ただ、面白いとは言ってないよ。
さっくりあらすじ
中世のヨーロッパ、都会の喧騒から離れた森の中にある修道院には様々な事情で修道女たちが暮らしていた。
信仰心はあるものの、異常に口が悪く凶暴な修道女たちは暇を持て余し、鬱憤を溜め込んでいる。
そんなある日、ワケありの聾唖者の小間使いが修道院で働くことになるのだが、、、
口汚く乱暴なシスターたち
神父と小間使い
狂ったシスター・フェルナンダ
オーブリー・プラザが超素敵
スレッスレのブラックジョーク
いや実際には完全にアウトだと思いますが、シニカルでウィットに富んだユーモアの数々は個人的に大好物なもんで、本当に素敵な映画でしたよ。
ただし、まともな感性で観れば8:2くらいで否定的な意見になるであろうことは念を押しておきます。
いち作品としても明確なテーマがハッキリせず、とても完成度が高い映画だとは言えません。
良く言えば粗削り、悪く言えば投げっぱなしで未完成といったところでしょうか。
とりあえず観終わった際は「これは何の話なんだ?」と首を傾げることになるでしょう。
しかし、その粗削りの中に光る魅力的な要素が点在するのもまた事実。
口汚い修道女というベタな笑いから、告解を通したくだらない笑いから、時代背景を上手く引用した笑いまで。
あっさりめな味付けながらも、よくこれが公開できたなと感心するばかりですな。
物語としては田舎の修道院に事実上の軟禁状態な日々を送る修道女たちと、とある理由で修道院で過ごすことになった若き小間使いのドタバタ劇が描かれます。
まぁ修道女だからって誰もが清廉潔白な人ではないでしょうし、何かしらの問題を抱える人たちの駆け込み寺的な側面もあったのでしょう。
しかし平和で退屈な毎日に飽き飽きしている修道女たち、宗教的にはバンバン罪を犯している彼女たちの姿には苦笑いせざるを得ませんが。
裕福な家庭に生まれ、元の生活に戻ることを心から望んでいるアレサンドラ。
きちんと修道院の活動をこなしながらも、不審な行動を繰り返すフェルナンダ。
真面目で融通が利かない生徒会長系なジネブラ。
3人とも非常に個性的で、美しかったり妖艶だったり、はたまた可愛らしかったりと、それぞれの魅力を適材適所に発揮しています。
そんな彼女らを見守る神父・トマソもまたユニークな存在であり、演じるジョン・C・ライリーの深い演技力も相まって非常に良いコメディ・リリーフとなっています。
彼らの過ごす日々から描かれる宗教観は微妙に現実味を感じさせる塩梅で構成されており、馬鹿にしているようでそうでもないようで、これが本当に絶妙なバランス感覚なんですな。
信仰心を持つこと自体を笑いに変えるのではなく、信仰心と煩悩の間で激しく揺れ動く乙女心をコミカルに表現しているわけで。
不謹慎な面白さって痛快だよね、実際。
修道衣に身を包む彼女らは一様に潔白で美しい姿ですが、もう序盤からエンジン全開。
かつて働いていた中年の小間使いに話しかければ「ファック!!」のオンパレードでキレ始めるわ、凶器を手に暴力を振るうわ、ユダヤ人だと罵るわ。
神父も神職をこなしてはいるものの、彼女らに強く出ることもなく、腫物には触らないポンコツっぷり。
ついでにワインは飲むわ、マザー(修道院長)とも普通にデキてるわ。
そして偶然の出会いから修道院にやって来たイケメン小間使いを見た瞬間に、彼女らの鬱憤が性欲に転換され、さらなる暴走を引き起こすんですな。
ここからは禁忌のオンパレードで姦通・同性愛・薬物使用(大麻)・そして黒魔術と。
司祭が来てからのドタバタっぷりも、罪の赦しを得るための告解も、笑っちゃダメなんだけど面白いんだよね。
とはいえ笑って良いのかどうかも微妙な演出の数々は本当に玄人向けな印象で、緩くソフトな笑いを期待すると裏切られます。
マジで。
あとは繰り返しになりますが、個人的に大好きなオーブリー・プラザが今回もしっかりと存在感を主張し、エロ可愛さも健在で大満足です。
何でしょうね?
ずばぬけて美人てこともないんですけどね、全身からほとばしる不思議な魅力がありますね。
こりゃ久しぶりに推し女優の七武海の勢力が変わりそうですよ。
まとめ
殆どの方はつまらないor微妙な判定になることでしょう。
「面白いのか?」と問われると正直ハッキリと答えることもできません。
むしろ自分が何故にこの映画にツボったのかもよく分かりませんが、それでも何回も観たいと思う何かはあったと思います。
中世の宗教を現実的な目線で捉えた問題作として、若き女優たちの結構な体当たり演技を発揮させた問題作として。
要はゆったりと笑える問題作ですな。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。