ザ・ナンバー


(原題:The Number)
2017年/南アフリカ
上映時間:92分
監督:カロ・マタバネ
キャスト:モツスィ・マッハーノ/プレスリー・チュエニハヤエ/デオン・ロッツ/ワーレン・メイスモラ/他

 




 

南アフリカに実在するギャング「ナンバーズ」で、幹部に成り上がった男を描くノンフィクション・ドラマ。

劣悪極まる刑務所の環境と、そこに暮らす受刑者の生々しい暴力性が特徴的な作品です。

実際に存在するらしいプリズン・ギャングの実態をリアルに描写した映画とも言えますし、かなりアクが強い問題作だとも思います。

面白いかどうかは何とも言えませんが、暴力が支配する世界で、暴力を糧に生きてきた男が魅せる微かな人間性には少しだけ考えさせられるものがあります。

 

 

 

さっくりあらすじ

「ナンバーズ」と呼ばれる複数のギャングが支配する刑務所で、マガディンは「28」と呼ばれるグループで20年以上に渡り、組織に貢献してきた。

新たに囚人が入所すればドラッグを隠し持つ男は”鉄砲玉”にされ、怯えた男は”性処理”用として生きることになる。

堂々と賄賂のやり取りが行われていても看守は気にする素振りも無く、牢の中では囚人が大麻を吸うことが日常的になっていた。

しかし刑務所内では看守の権限は極めて強く、時に容赦の無い暴力で以て粛清が行われる。

そんなある日、刑務所に新たな所長が赴任してくるのだが、、、

 

 

 

 

武闘派ギャング「28」の幹部達

 

看守達も暴力的で支配的

 

しかし取引は堂々と行われる

 

 

 

 

悪に染まった者の末路

ドラマ性のある映画とは言え、どちらかと言えばドキュメンタリータッチな雰囲気があり、かなり現実の環境に近づけたであろう演出が見て取れます。

そして劇中の登場人物は大半が悪い人間です。

それもちょっとやそっとのレベルではなく、相当な悪人ばかり。

こういったリアルなギャングの生態を見せられると、悪人や罪人の更生というのは希望的な観測であって、誰もが賛成し得るものにはならないのが良く分かります。

 

主人公のギャング・マガディンが武闘派グループ「28」の”治安判事”に昇格するところから物語は始まります。

見た目からして若くはなさそうなマガディンですが、映画を通して見るに”特攻隊長”的なポジションになるのかな?

幹部は幹部でも、組織内での序列が高いとまでは言えなさそうな哀愁が漂っています。

そんな彼が色々と思うところもあり、組織内で思うような出世も見込めず、やりようの無い憤りを感じ始めた時に新たな刑務所長と出会います。

 

 

で、この新所長はマガディンに何を思ったのか、彼の更生を通して刑務所内の改善を図ろうとするわけで。

ギャングになる以前、まだ法律を勉強していた頃のマガディンの良心に訴えよう考えます。

そんな所長の提案に、真っ当に生きられるかもしれない可能性を見出してしまい、組織の幹部という事もあり深く葛藤することに。

 

また妻から「息子がギャングになった」と告げられたこともあり、自分のような将来が見えてしまった息子の為にも、所長の考えに耳を貸すようになっていきます。

しかし劇中で何度も語られるように「組織への入り口は一つ、出口も一つ」ということで、やはり裏切者には”死”に至る制裁が待っているわけですな。

 

 

うーん、、良心に目覚めた悪人の物語か、はたまた悪に染まり切れなかった悪人の物語か。

リアルと言えばリアル、ドキュメンタリータッチな演出は悪くないかなと。

でもドキュメンタリー映画ではないし、ノンフィクション・ドラマとしての括りで考えれば、完成度はちょっと微妙なところかな。

 

しかしそれを補って余りある”本物”のギャングの描写は見応えがありますし、刑務所内で生まれる暴力と利権はかなりショッキングと言うかセンセーショナルと言うか。

現実にあるギャング組織の実態を体感するにはうってつけの作品だとも言えるでしょう。

 

そのギャング達もならず者の集団ではあるものの、厳しい規律や歴史的な文化があり、長い年月をかけて完成された組織にも見えます。

下剋上が起こらない統制された上下関係や、欠かさず行われる会合の号令など、ギャングとしての秩序が存在しているわけで。

絶対に中には入りたくない場所ではありますが、暴力が利益を生む世界で生きる人達の生態は不謹慎ながらも興味深いものがありますね。

 

 




 

 

まとめ

主人公・マガディンの視点を通した本作ですが、人生をやり直す物語としては全体的な物足りなさが残ります。

組織からの脱退を中心に描いた物語であり、その後に何が起きたのかはボカしてあるのも少しモヤモヤしますしね。

つまりは脱退したギャングよりも、ギャングそのものにスポットを当てた映画だと言えるでしょう。

 

繰り返しになりますが、興味深いテーマではあるものの、映画として面白いとまでは言えません。

南アフリカに実在する、血生臭いお話に興味があれば観て損は無いでしょう。

 

よければ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 

 



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