ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書


(原題:The Post)
2017年/アメリカ
上映時間:116分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
キャスト:メリル・ストリープ/トム・ハンクス/サラ・ポールソン/ボブ・オデンカーク/トレイシー・レッツ/他

 




 

アメリカ国防省の機密文書の存在を暴露した、2人のジャーナリストの姿を描くノンフィクション・ドラマ。

文書はベトナム戦争に繋がるトンキン湾事件に関する政府報告書であり、いわゆる”秘密工作”を企んだアメリカ合衆国の暗部とも言えるのでしょう。

 

アメリカの安全保障に対する機密の漏洩なのか。

はたまた都合の悪い真実を暴こうとするジャーナリズムなのか。

非常に興味深い社会派サスペンスの良作です。

 

 

 

さっくりあらすじ

1971年、ニクソン大統領政権下ではベトナム戦争が泥沼化し、国内で反戦ムードが高まっていた。

軍事アナリストのエルズバーグは国防長官の指示で作成に関わったベトナム戦争の分析報告書「ペンタゴン・ペーパーズ」を研究所から無断で持ち出した。

その上でコピーを取り、ニューヨーク・タイムズ紙の記者に渡したことで、タイムズ紙は大スクープを手にすることに。

ワシントン・ポスト紙の編集長ベン・ブラッドリーは報道の力を信じ、発行人キャサリン・グラハムに対しタイムズ紙が掲載しなかった部分の機密文書を手に入れるように勧める。

しかしキャサリンの友人でもある国防長官ために拒否され、ベンが別の情報源を探すと、今度は謎の女性が文書をポスト紙に持ち込むのだが、、、

 

 

 

 

ポスト紙の最高責任者キャサリン・グラハム
保守的ながらも亡き夫の後を継ぐ

 

敏腕編集長ベン・ブラッドリー
タイムズ紙に負けずスクープを狙う

 

真実の追求のため
2人は共に首を懸ける

 

 

 

 

国民のためのメディア

まずは監督を務めたスティーヴン・スピルバーグですが、本作が公開されたのが3月30日。

対して超エンタメ作品「レディ・プレイヤー・1」が公開されたのが4月20日と、ほぼ同時期に対照的な作品を手掛けたことになります。

SF全開な娯楽作品から、リアリティ溢れる社会派ドラマまで、ここまで器用に作り分けられるのはもう天才としか言いようがないですよね。

本当に凄い。

 

 

さて、SNSが普及し、良くも悪くも情報が散乱する昨今。

情報源が疑わしいフェイクニュースが散見し、言ったもん勝ちと言わんばかりに無責任なスクープが乱立しています。

正確な情報を伝えるのはメディアやジャーナリズムの基本中の基本だと思いますが、金儲けこそが絶対的正義となる資本主義社会では、その基本もないがしろにされがちなのが現実でしょう。

 

政治や経済についての中立な報道と、それらに感心を寄せる我々一般市民と、どちらも欠けているのが現在の日本社会なのかなと思います。

こんなゲーム&映画&漫画オタクの引きこもりが言うのも何ですが(泣)

 

それに対して、経営がおぼつかない発行人と、野心溢れる編集者の情熱は実に見事なもの。

明らかにヤバい情報をゲットし、国家の機密に関わるような報道をする責任感。

正義や裁判所の圧力に負けず、国民の”知る権利”を尊重する道義感。

そして株主や財産を無くすリスクを負ってまで、自分の正しい行いを信じる正義感と。

メディアとして正義を成すために障害を避け、時に戦い、己の信念に従って辛い決断も下す彼らの姿には”熱さ”があるんですな。

 

ちなみに主人公のキャサリン・グラハム氏ですが、アメリカで最も影響力のある女性の一人に数えられているそうで、これはもう納得の偉人っぷりですよ。

そういった、女性の社会進出の架け橋としての視点で観るのも興味深いですね。

 

 

 

政治を扱う映画は総じて地味で間延びしがちなものですが、メリル・ストリープとトム・ハンクスという実力派コンビにより飽きずに進む心地よさがあります。

その稀有な役者を存分に活かすスピルバーグ監督の手腕もまた然り。

とにかく映画としての完成度が高いんですね。

 

情報が漏洩していく緊張感。

政府を相手に、保身に走らず権力と戦う緊張感。

そして人生を懸け、重大な決断を下す覚悟をする緊張感。

 

映像的には極めて地味な演出の数々ですが、思わず息を飲むような緊張感を感じさせるシーンの数々は実に素晴らしいものです。

名ばかりの最高権力者だったキャサリンが、役員会議で誰にも相手にされなかった彼女が凛とした心の成長は本当に感動しますよ。

 

 

マイナス面としては、そもそも難しい政治のお話なんですよ。

物語の背景からして簡単な話ではないですし、本格派な社会派ドラマなので、事前の予習が必要かなと。

良く言えば非常に勉強になる興味深い作品ですが、十分に理解できないと面白くはないかもしれませんね。

まぁエンタメ作品ではないので当たり前ですが、映画を楽しむにあたり勉強が必要なことも少なからずあるもんです。

 




 

 

まとめ

権力者に屈しないジャーナリズムを描いた傑作と呼んでも良いと思います。

これほどに深みのある社会派ドラマは結構久しぶりですし、世に公開する意味も極めて大きなものだと思います。

芸能人のゴシップも面白いものですが、それ以外のスクープが世に出る社会なら、日本の政治家ももう少しお利口になるかもしれませんね。

 

これは観て損の無い立派な映画です。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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