(原題:The Whole Nine Yards)
2000年/アメリカ
上映時間:98分
監督:ジョナサン・リン
キャスト:ブルース・ウィリス/マシュー・ペリー/ロザンナ・アークエット/マイケル・クラーク・ダンカン/他
冴えない歯科医が、隣に引っ越してきた殺し屋の騒動に巻き込まれるサスペンス・コメディ。
どの登場人物にもクセがあり、最後まで読めない展開が楽しめる佳作です。
笑顔でも目が笑っていないブルース・ウィリス。
体当たりでコミカルな演技に臨むも、どこかスベっているマシュー・ペリー。
そして妖艶な肉体で魅せてくれる女優達と。
派手さのある映画ではないですが、ついつい最後まで観てしまう魅力のある作品ですよ。
さっくりあらすじ
歯科医院を経営するオズは仲の冷え切った妻・ソフィと義母と、3人で暮らしている。
口汚く罵る妻や義母のストレスに嫌気が差しながらも、自身に掛かっている多額の保険金があるために妻は離婚しようとはしてくれず、途方に暮れていた。
そんなある日、嘗て”伝説の殺し屋”として名を馳せたジミー・チュデスキが引っ越してくる。
それを知ったソフィはジミーの居場所をマフィアに密告して賞金をもらおうと、嫌がるオズをマフィアの元へと向かわせるのだが、、、
冴えない歯科医のオズ
妻のソフィ
隣に引っ越してきたジミー
伝説の殺し屋として有名
そして雪崩式に騒動に巻き込まれる
古典的な喜劇
作品として古いというわけではなく、昔懐かしい古典的なコメディといった感じ。
何事にも動じず、常に冷静沈着な殺し屋・ジミーとは対照的に、事件に巻き込まれていく歯科医・オズのコミカルな演技が作品の中軸と言って良いでしょう。
いちいち大げさで、落ち着きの無いオーバーリアクション気味な演技は好き嫌いが分かれそうですが、個人的には結構好み。
往年のスラップスティック・コメディを控えめに演出したような印象で、予想以上の笑いは無いにしろ、それなりに楽しめるものだと思います。
一見して普通っぽい登場人物たちですが、徐々にアクが強いのが判明していき、最終的には誰もがイカれているのが良く分かります。
この”徐々に”というのが面白いところで、ジワジワと狂気が滲み出ていく構成はなかなかに見事なもの。
終わってみれば狂人たちによるお祭り騒ぎであり、誰もが愛情や憤怒など、何かしらの情により突き動かされているわけですな。
そして、そのドタバタっぷりを一人で支えるマシュー・ペリーが笑えるかどうかが全てと言っても過言ではありません。
全てのキャラクターが実に個性的で各々に魅力はあるのですが、コメディ映画であり、そのコメディを一人で担当しているので、彼の演技に笑えるかどうかがキモになるんですな。
よって彼のコミカルな演技が面白ければ佳作に、面白くなければ凡作になる大事な役柄となっております。
対してブルース・ウィリスは安定の存在感。
何となく人当たりの良さそうな中年男性ですが、実は数多くの命を奪ってきた殺し屋という、恐らくは得意分野であろう役ですな。
もう見たまんま気の良いおじさんといった雰囲気ではありますが、本当に何の躊躇もなく人をぬっ殺していく姿は怖いというか不気味というか。
そもそも登場人物が全員おかしいんですよね。
主人公の妻も、殺し屋の妻も、なんなら歯科医院のアシスタントまで。
およそモラルとか常識とかが通じないサイコパスの集団であり、唯一巻き込まれギャグを連発するオズだけがまともな感性を持っているんですね。
つまりイカれている人々が多数派になっている環境で、常識的なオズだけが浮いている構図がまた面白いわけです。
そんな彼らの人間関係もまた複雑であり、それぞれの思惑が交錯し、裏切り、裏切られる展開もまた魅力的。
最終的にどういった結末を迎えるのかの予想が困難で、なかなかに複雑で興味深いストーリーで魅せてくれます。
脚本的にも、構成的にも、割と高い完成度を誇っており、B級アクション・コメディとは一線を画す奥深さがあると思います。
まとめ
すごく面白いとまでは言いませんが、思いがけない魅力に溢れた映画だと思います。
数々の個性的なキャラクターが複雑に絡み合い、良く寝られたアイデアがテンポ良く仕上げられた映画として、十分なエンターテイメント性を発揮していると言えるでしょう。
何より笑いの質が日本人向けな印象もあり、結構笑える方も多いのではないかと。
個人的には歯医者のアシスタント・ジルを演じたアマンダ・ピートがストライク。
美人かどうかは微妙なところですが、どこか醸し出される色気と、脱ぎっぷりの良さが超素敵ですな。
(どうでもいい)
よくまとまった良作です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。