(原題:The Beach)
2000年/アメリカ/イギリス
上映時間:119分
監督:ダニー・ボイル
キャスト:レオナルド・ディカプリオ/ティルダ・ウィンストン/ロバート・カーライル/ヴィルジニー・ルドワイヤン/ギョーム・カネ/ピーター・ヤングブラッド・ヒルズ/パターソン・ジョゼフ/ラース・アレンツ・ハンセン/他
消費社会や資本主義を、痛烈に皮肉る作風が持ち味の監督ダニー・ボイルと、脚本家のジョン・ホッジによるサスペンス・スリラー映画です。
クセの強い作風のダニー監督の代表作は名作と評される「トレインスポッティング」やSFホラー「28日後」、真田広之も出演したSF作品「サンシャイン2057」など。
数々の賞にノミネートされると同時に、深い印象を残す作品が多いように感じます。
ちなみ今やハリウッドスターのユアン・マクレガーを主演に据えることが多く、本作でもユアン・マクレガーが主演になる予定だったようです。
ただ、大人の事情により当時「タイタニック」で一躍大スターとなったレオ様を起用することになったんだとか。
さっくりあらすじ
アメリカを飛び出し、刺激を求めタイにやってきた青年のリチャード。
彼は安宿で出会った怪しい男・ダフィから、夢の楽園と言われる孤島「ザ・ビーチ」の話を聞く。
妄信的にビーチについて語るダフィ、話半分でビーチの存在を信じていなかったリチャードだったが、翌日になると孤島への地図を残しダフィは変死していた。
そして彼の死をきっかけに、隣り合わせたフランス人カップルと共に楽園探しの旅に出るのだが、、、
夢の楽園”ザ・ビーチ”
舞台となったのはタイ・ピピ島
楽園を追い求めやって来た一行
映画を通したメッセージ
イマイチ評判がよろしくない本作ですが、「楽園の描写がつまらない」とか「トレスポと比べてつまらない」とか、否定的な意見が多く見受けられます。
擁護するわけでもないですが、否定的に見る方々は映画を通して訴えるメッセージ性をちゃんと感じているんでしょうか?
「トレインスポッティング」は面白いけど「ザ・ビーチ」はつまらないと思った方々は雰囲気重視で判断するような、一番幼稚な観方をしているのかなと。
似て非なるものではありますが、作品の方向性はかなり近いですからね。
演出の仕方と舞台が大きく異なるだけで、本質は似てる、ダニー・ボイル節は本作でも健在です。
そもそもダニー・ボイルとジョン・ホッジのコンビが訴えることは一貫して同じで、資本主義社会と人間の関係をブラックユーモアで皮肉るところにあります。
具体的な資本主義と社会主義の差は置いといて(とゆーか僕にも良く分かりまへん)ざっくり説明すると、
「トレイン・スポッティング」
・労働者階級(貧しい社会的弱者)の青年が、資本主義社会(消費経済)の中で選べない未来を掴もうともがくお話。
↓
巡り巡った金とドラッグの中でかつて存在していた文化と仲間意識が無くなっていき、”友”(弱者同士の絆)を捨てて”金”(資本主義)という現実を手に入れる。
「ザ・ビーチ」
・自然の中で半自給自足の生活を送る人たち(秘密を共有する仲間達)が、秘密の島で栽培される麻薬に絡む大金を得るために、協力しあった末にすったもんだするお話。
↓
いざ自分達のものになると軋轢が生まれ、結束していたはずの仲間意識が瓦解(資本主義、消費社会で生まれる嫉妬や格差)する。
といった具合で、全く同じじゃないですけど方向性は一貫しているわけですな。
非現実の楽園の中で、生活をする。
誰もが思い浮かべる夢のようなお話ですが、実際にそれを人間のコミュニティで実践するとどうなるのか?を表現した作品だと言えます。
実際に先進国のほとんどは、資本主義が中心の経済政策となっているわけです。
「収入による格差社会」が当たり前の世の中で過ごしている僕らにとって、それ以外の現実を受け入れることはけっこう難しいんじゃないすかね?
文明の無い非現実な世界で暮らしても、身に付いた現実からは逃れられないということになります。
まぁざっくり言えば人間にとっては、文明社会>楽園てことですかね。
まとめ
ため息が出るほど美しい景観は、世界中どこでも存在しますが、人の姿が無いからこそ美しいんですね。
そういう意味では人が住める楽園なんて夢物語なのかもしれません。
若きレオ様を筆頭にティルダ・ウィンストン、ロバート・カーライルなどの個性的な俳優の演技が光ります。
興行的には大失敗だったようですが、個人的には面白かった映画です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。
おまけ
今年、2016年に「トレインスポッティング2」が公開されるようです。監督、脚本、キャストは同じ人たちを起用するようで、完全なる続編と呼べる作品になります。
ファンとしては嬉しさ半分、不安が半分とハラハラが止まりませんね。