(原題:Training Day)
2001年/アメリカ
上映時間:120分
監督:アントワーン・フークア
キャスト:デンゼル・ワシントン/イーサン・ホーク/スコット・グレン/エヴァ・メンデス/トム・べレンジャー/スヌープ・ドッグ/ハリス・ユーリン/他
ベテラン刑事と新人刑事が絆を深めるクライム系バディ・ムービー。
かと思いきや、ロサンゼルスを舞台に刑事としての立場を利用する汚職刑事と、正義感に溢れる新米が対立するという異色のクライム・サスペンス。
善良で博識な人物を演じることが多かったデンゼル・ワシントンが悪人を演じた珍しい作品でもあり、その悪役っぷり(というか怖さ)で見事にオスカー俳優に輝きました。
脚本上でロスのストリートギャングが登場するシーンが多々あり、実際のギャングの縄張りで許可を得て撮影したのも当時話題になったと思います。
ちなみに実話がベースになっているんだそうです。
さっくりあらすじ
ロサンゼルス市警、正義感溢れる若き警官ジェイクは交通課から麻薬取締課へと異動することになった。
尊敬する大ベテランの麻薬捜査官・アロンゾに呼び出され、さっそくおとり捜査を行い麻薬を押収する。
しかし帰り際に「か弱い羊でいるか、獰猛な狼になるのか選べ」と告げられ、ジェイクは押収した麻薬を吸うことになる。
麻薬の影響が残る中、ジェイクは暴行されている女学生を発見し、2人組の男を倒し女学生から調書の協力を頼むもアロンゾは意に介せず、捕まえた男から麻薬を押収し女学生を帰らせてしまう。
今度は令状無しで被疑者の家に乗り込むアロンゾ、それについて行くジェイク、結果的に銃撃戦となり何とか逃げだす2人。
脅迫、暴行、証拠のでっちあげが横行する麻薬取締課の姿に理解できず、ジェイクはアロンゾに対しても疑問を持ち始めるのだが、、、
麻薬取締課の新人・ジェイク
伝説の取締官・アロンゾ
無茶苦茶な捜査方法に振り回されることに
生々しい”汚職”の怖さ
LAPD大丈夫か?と聞きたくなるほどに、闇に包まれている警察の汚職事件。
警察組織では到底根絶やしにできない、というか取り締まれない強大で深刻な麻薬汚染。
まさにミイラ取りがミイラになるが如く、麻薬をビジネスにしてしまおうという警官の姿が背景になっています。
120分の映画ではありますが実際にはたった2日間のお話であり、ドジを踏んでロシアンマフィアに脅されたアロンゾと、何も知らずに青臭い正義感を振りかざすジェイクを中心に物語は進んでいきます。
ちなみに脚本を書き上げたのは「ヒューリー」や「スーサイド・スクワッド」で監督を務めたデヴィッド・エアー。
このリアルに漂う生臭さは彼の支えによるところが大きいように思います。
早くから抜きんでた演技力と存在感で、何度も主演男優賞にノミネートされていたデンゼル・ワシントン。
そんな彼が”悪”を演じたことで見事受賞するという結果は、彼の新たな可能性を見出したことに他なりません。
実際に画面に映るアロンゾ刑事の姿はまさに”悪”そのもの、めっちゃくちゃ怖いです。
ギャングのような出で立ちにおよそ警官では手が出ないであろう高級車、そして歯向かうものは全て潰すと言わんばかりの暴力性。
これらの”裏の顔”は非常に迫力があり、法の網を潜り儲けてきたずる賢さにも怖さを感じます。
とはいえ若き頃のアロンゾもまた正義感に溢れた刑事だったことが説明されており、先輩捜査官の汚職やスラム街の環境、そしてギャングと関わる日々が徐々に彼を蝕んでいったようにも思えますが。
新人の相棒・ジェイクを演じるイーサン・ホークも若々しく、端正な顔立ちで経験の浅い捜査官という役に上手くハマっています。
正義感は強いし、容疑者の制圧も銃撃のスキルも一人前なんだけど、どこか頼りないという絶妙なキャスティング&演技力。
ただ本作に限ってはデンゼル・ワシントンの引き立てに徹しているようにも感じますが、破天荒な先輩と生真面目な後輩の画は非常にバランス良くできております。
あと余談ですがアロンゾの愛人・サラを演じるエヴァ・メンデスが素敵です。
「レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード」や「ワイルドスピード」にも出演している女優ですが、コミカルだったり妖艶だったり、南米特有のエキゾチックな美しさがありますね。
まとめ
割と単純なストーリーながら、現実じみているというか、社会的な犯罪の闇を描く映画なので、やや難解に感じるかもしれません。
麻薬取引という非現実なものの詳細とか、ガンガン人をぬっ殺すくせにファミリー愛の強いメキシカンの流儀とか、色々と興味深い描写は多いかなと思いますので、その辺にも注目してほしい作品です。
ひたすらに悪く、そして怖いデンゼル・ワシントンの演技は一見の価値ありです。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。