二ツ星の料理人


(原題:Burnt)
2015年/アメリカ
上映時間:101分
監督:ジョン・ウェルズ
キャスト:ブラッドリー・クーパー/シエナ・ミラー/オマール・シー/ダニエル・ブリュール/リッカルド・スカマルチョ/他

 




 

 

トラブルメーカーの天才料理人が、世界一のレストランに挑む迷作ヒューマン・ドラマ。

筆者は全く観ていませんが、どうやらTBS2019年放送の「グランメゾン東京」が脚本パクった疑惑が持ち上がってたんだそうですな。

パクリか、オマージュかの線引きは実に難しいところですが、SNSをはじめとした情報過多の時代だと本当のオリジナルを作るのは難しいものだとも思います。

嫌なら観なければ良いんだし、面白ければ気にせず絶賛すれば良いし、物事を楽しむことにすら気を使う現代に少々息苦しさも感じますな。

 

 

 

さっくりあらすじ

かつて天才と称されたアダム・ジョーンズは麻薬・酒・女を絶ち、世界一のレストランを作る夢を抱き、ロンドンへとやって来た。

ホテルの支配人でもある友人・トニーの元を訪れ、その実力を見せつけたアダムはホテルのレストランを任され、腕利きのシェフを集め始める。

そして新たに開店したレストランにミシュランの調査員と思しき2人組がやって来るのだが、、、

 

 

 

 

ホテル経営者・トニーの元を訪ね
強引にシェフとして潜り込む

 

腕利きのシェフを集め
三ツ星目指して再出発

 

そう簡単には上手くいかず
イライラもMAXに

 

 

 

 

なんじゃこりゃ

もうね、1から10まで全部おかしい。

かろうじて映画としての体裁を守っているのはブラッドリー・クーパーの迫真の演技のおかげであり、それ以上に観るべきものはありません。

観る価値の無い駄作とは言いませんが、これはさすがにヒドい出来だと言わざるを得ないでしょう。

 

そもそも冒頭からして意味不明。

何やら酒と薬物でキャリアを台無しにしたらしいアダムさんですが、そのキ〇ガイっぷりに開いた口が塞がりません。

・自分に課した罰として、牡蠣の殻を100万個剥く(そして店をバックレる)

・辛口料理評論家を焚き付け、自作自演でレストランに潜り込む。

・「俺について勉強したいなら授業料払え」→下っ端シェフ(彼女と同棲中)の家に転がり込む。

・かつて悪質な嫌がらせの末に店を潰したシェフを「水に流そう」で雇う。

・「才能を無駄にするな」の一言で他人の仕事を奪う。

・酒も薬物も女も絶った→部下の女性シェフに手を出す。

・部下にミスがあると皿や食材を投げつける。

・マフィアの借金を踏み倒す。

・失敗すると自殺したがる。

と、ざっと思い出せるだけでもこれくらいイカれた人物であり、これはどう考えても擁護できないキチ〇イとしか言えないでしょう。

 

自己中心とか傲慢なんて生易しい言葉じゃとても足りないでしょうし、実際にいたら関わってはいけない病人にしか見えません。

そんな彼が挫折を乗り越えて成功した物語を描かれてもね、全く感動しないし、むしろ料理界から消えてくれとしか思わないですよ。

 

 

それ以外にも映画として破綻している部分は全面的に散見され、それぞれのエピソードが極めて薄く、味がしないんですな。

主人公・アダムの背景すら「アル中&ヤク中&自己中」くらいしか分からないのに、他のキャラはもっと悲惨ですよ。

刑務所から出所したマックスは一切描かれることなく。

屋台でスカウトされたデヴィッドも殆ど描かれることはなく。

同性愛者としてアダムを好いているせいで、たまに出てきては都合よく使われるトニー。

大嫌いなアダムのせいで窮地に追い込まれるも、何の脈絡も無くアダムを天才だと認めるリース。

かつての恋人だからという理由で、莫大な借金を肩代わりするアンヌ。

そこまでしてもらったにも関わらず、新たな恋人候補としてキスを交わすシングルマザーのエレーナ。

などなど、三ツ星を目指す上で全く必要の無い無駄なエピソードが散りばめられ、肝心の料理のシーンが少ないという破綻っぷり。

 

何を描こうとして、何を表現する作品なのかの焦点が絞れず、最初から最後まで映画の軸がブレブレなんですな。

で、いざキッチンを描けば、部下の仕事が気に入らないアダムが怒鳴る&暴れるだけのストレスフルな展開に。

素材の切り方が気に入らないとスライサーを投げつけ(暴行)、魚に謝れと女性の胸ぐらを掴み(暴行)、ホタテが固いと無理やり食べさせ(パワハラ)、挙句に自分の仕事は盛り付けのみというね、誰もが納得の〇チガイっぷりでしょう。

というか、観てれば絶対に誰もが思うでしょう「自分でやれよ」と。

 

料理の世界が厳しい、ましてや星を狙う店が厳しいのは理解できますが、多分こうじゃないと思う。

総じて製作者の意図が分からないボヤけた作品であり、これはもう監督&編集の失敗と言わざるを得ません。

 

 




 

 

まとめ

落ちこぼれた天才料理人を軸に、友情や裏切り、ロマンスや同性愛などを詰め込み、見事なまでにスベった作品です。

同じ料理系映画ならコッチの方が断然面白いよ。

個人的に好きなブラッドリー・クーパーの熱演や、数少ない美しい料理の演出などもあり観て損するような映画ではありませんが、お世辞にも面白いとは言えません。

 

もっと面白くなったであろう余白だらけの仕上がりに、勿体なさが拭えない不遇の作品ですな。

良ければ一度ご鑑賞くださいませ。



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