(原題:至尊先生)
2019年/中国
上映時間:105分
監督:グオ・ヤーポン
キャスト:チン・シュウホウ/スン・ハオ/モン・ヂーチャオ/他
1985年から続くチャイニーズ・アクション・コメディの金字塔「霊幻道士」シリーズの10作目。
1990年代初期ですかね、筆者が子供の頃はキョンシーをやっつける道士(中国版魔法剣士)に憧れ、黄色い折り紙に赤ペンでお札を作ったりしたもんで、当時のキョンシーブームは結構なものだったと記憶しております。
ベタベタなコメディ演出と中国ならではのワイヤーアクションが織りなすエンタメ性は当時の少年の心を鷲掴みにしたものです。
しかしハリウッド映画が身近なものになり、映像表現の選択肢がより広がるようになり、いつしかチャイニーズ・エンターテイメントからは距離を置くようになっていたんですよ。
が、いつか観た「キョンシー」が個人的に凄く面白かったもんで、今一度キョンシーの魅力を見つめなおすきっかけになりました。
無垢な少年だったあの頃のように楽しめるのか、不安を抱えながら観たわけなんですが、、
さっくりあらすじ
町一番の富豪・ワンに憑りついた妖怪を捉え、天の道理を説き封印したハオ道士と2人の弟子チュウサム・モンチョイ。
ワンの娘であるアーシャンに言い寄るモンチョイに対しワンは結納金3000元を払えと要求し、売り言葉に買い言葉でチュウサムが3日で用意すると約束してしまった。
翌日、風水的に埋葬に向かない西山の工事現場で棺が発見され、200年前に途絶えた古代の邪教が封じた妖怪・山魈だと判明し、ハオ道士はすぐに埋めなおすべきだと主張するが逆に逮捕されてしまう。
一方、留守を任されていたチュウサムは無縁墓地で宝を守っていると噂される妖怪・黄妖の元に向かうのだが、、、
様々な術を使いこなすハオ道士
微妙に天然
弟子のモンチョイとチュウサム
できる一番弟子とアホな二番弟子
エンドロールが秀逸
えー先に言ってしまうと、面白い映画ではありません。
もちろん感じ方は個人差があると思いますが、7割強の方は「つまんない」と思う事でしょう。
そもそもキョンシー出てこないし。
古めかしいワイヤーアクション中心だし。
レベルの低いCGが散見するし。
ラスボスも低予算感が漂う特撮だし。
コメディーに重きを置いてアクションはおざなりだし。
陳腐なロマンスが中心だし。。
と、悪いところを挙げればもうキリの無い話になってしまいまして、まともに映画として批評するのであれば「駄作ではないけどつまんない作品」が妥当なところでしょうね。
しかし、お約束に次ぐお約束、もう既視感たっぷりで古臭い演出の数々はなんともノスタルジックな気持ちにさせられますし、殺伐とはしないコミカルな物語はどこかほっこりとさせる暖かみがあるのもまた事実。
ちょっと抜けてるスゴ腕師匠+半人前だけど頼れる一番弟子+何もできないコメディ担当の二番弟子、というテンプレも懐かしさを感じさせますね。
また、良い意味でのチープ感も個人的には嫌いじゃないですし、アクションに関してはもっと頑張って欲しかった気もしますが、今回はロマンスが中心なのでそれもまぁ許容範囲だと言って良いのではないでしょうか。
唯一マジでガッカリしたのはキョンシーが出てこない、の一点に尽きます。
キャスティングに関しては全く文句無し、演者は適材適所、皆いい仕事してます。
ハオ道士を演じるチン・シュウホウはナイスミドルなイケメンおじさんですが、あらゆる法術を使いこなす妖怪退治のエキスパートとして実に魅力的。
そのくせ死体を怖がったり、40~50代だと思われますが童貞だったりとか、微妙なキャラ崩壊も個人的には好みです。
その弟子として働く、チュウサムとモンチョイもまた素敵。
どう説明すれば伝わるか難しいんですが、もう見た目からしてチュウサム(できる弟子)とモンチョイ(アホな弟子)なんですよね。
キャラ自体に説得力があると言いますか、何だかんだで愛すべきおバカ3人組という感じで、どうにも愛らしい掛け合いだけは観てて飽きないものです。
そして本作で最も感動したのがエンドロールで流れるBGM。
普通はね、本編を見たらエンドロールなんか気にしないもんですが、本作のBGMが超絶カッコいいんですよ。
ゴリゴリのラップ調の曲に妖怪退治のライムを乗せるという前代未聞のヒップホップは凄いですよ、マジで。
ちょっとサントラ欲しいもんね。
あとはね、お約束ですが女性の妖怪が皆揃って美人です。
というか、美人な女性しか妖怪になれないと言った方が正しいか。
孤独に生きるスースーなんかは日本受けしそうな可愛らしい顔立ちですし、お菓子を食べて喜ぶ姿や、ほお紅の使い方が分からず事故った顔に仕上がったリアクションなんかは悶絶ものですわ。
ただし、ひとつだけ気になった点がありまして。
お土産を持って会いに行く→精気を奪われいつかは死に至る。
お土産を持って会いに行く→財産を奪われいつかは破産する。
という構図がキャバクラそのものなんすよね、考えようによっては現代日本でも妖怪のような存在は普通にいるということでしょうか。
まとめ
えー、、繰り返しになりますが、やはり面白い映画ではありません。
初見の方はそこまで楽しめないでしょうし、ファンの方もそんなに肯定的に受け入れられる作品とは言えないでしょう。
どこにでもある凡作の1つだと言い切りますが、それでも個人的には好きなんですよねぇ。
そもそもキョンシー好きだからね、かなり甘めな判定になっていることは否定しませんが、誰もが「微妙」と言っていても内心「超好き」と思うようなことってあるでしょ?
そんな感じよ(馴れ馴れしい)
オススメはできませんが、暇で何もすることが無い時にどうぞ。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。