グラディエーター


(原題:Gladiator)
2000年/アメリカ
上映時間:155分
監督:リドリー・スコット
キャスト:ラッセル・クロウ/ホアキン・フェニックス/コニー・ニールセン/スペンサー・トリート・クラーク/リチャード・ハリス/他

 




 

 

ローマ帝国時代を舞台に、帝国軍将軍、ローマ皇帝、そして皇太子の確執や復讐を描いた壮大な歴史大作映画。

エイリアン」や「ブレードランナー」でお馴染みのリドリー・スコットが監督を務めます。

さらに本作でオスカー俳優へと輝いたラッセル・クロウ、「her/世界でひとつの彼女」でゴールデングローブ主演男優賞に輝いたホアキン・フェニックスが共演し、共に素晴らしい演技で魅せてくれます。

美しくも生々しい映像美に加え、骨太で悲哀が漂う脚本は非常に見応えがあり、長丁場な作品でも飽きることはありません。

 

 

 

さっくりあらすじ

ローマ帝国にて、平民から成り上がった優秀な将軍・マキシマスはゲルマニア遠征で蛮族との戦いに勝利するも、傷つき倒れていく兵士達の姿を目の当たりにした皇帝・アウレリウスは膨張し続ける帝国の崩壊を感じ取っていた。

帝位継承で思い悩む皇帝は貴族との謀略政治を好む皇太子・コモドゥスを気に入らず、勇敢で慎ましいマキシマスの才を買っており、問題が山積するローマでは誰もが等しく政治に参加する共和制こそが必要と考えている。

皇帝はマキシマムに戦の愚かさを訴え共和政治の構想を伝えると共に、後継者として君主としての器を持たないコモドゥスではなくマキシマムを指名するが、急な話にマキシマムは返事を保留する。

帝位をマキシマムに譲ると宣言されたコモドゥスは皇帝として、父として放たれた言葉に深く傷つき、涙を流しながら皇帝を殺してしまう。

皇帝の「病死」を知らされたマキシマムはすぐさま事実に気づき、新皇帝・コモドゥスへの忠誠を捨て真実を訴えようとするも、すでに腹心の部下たちはコモドゥス側についており、マキシマスは捕らえられてしまう。

何とか逃げ出し故郷へ帰るマキシマスだったが、既に妻子は殺され、絶望してしまうのだが、、、

 

 

 

 

ローマ帝国軍司令官・マキシマス

 

父を殺し、皇帝になったコモドゥス

 

身分を隠し、剣闘士として復讐の時を待つ

 

 

 

 

英雄と皇太子の光と影

無欲で勇猛果敢、平民出身だけに身分をわきまえ、立場を超えた野心を持たないが故に権力争いに巻き込まれてしまう悲哀の将軍・マキシマス。

一方で皇帝の息子として生を受け、レールの上で育ったにも関わらず皇帝の寵愛に恵まれず、深いコンプレックスと嫉妬心に苛まれた悲哀の皇太子・コモドゥス。

取って付けたような皇帝の権力を手中に収め、中身の無い王座に君臨するコモドゥスと、妻子を含む全てを失い剣奴として復讐を誓うマキシマスの存在はまさに光と影のような存在です。

 

ただその”光”も正しい道を歩んで得たものとは言えず、”透き通るような神々しい白”といった印象は皆無であり、頂点に立つものとしての不安定さを感じさせます。

また”影”もあらゆるものを奪われた復讐心の塊であり、どこか”濁ったような黒”を感じさせる影の演出は素晴らしいの一言ですな。

 

 

特筆すべきは濃厚なアクションであり、武将としても将軍としても優秀なマキシマスの雄姿は一見の価値あり。

隊列を崩さずに騎馬突撃する迫力満点のシーンにはじまり、剣闘士として仲間を導く指揮力、そして個人としての武は力強く爽快でカッコよく、民衆を味方につけるカリスマ性も頷ける説得力に溢れています。

ワイルドだけれども知性や教養を感じさせるキャラクターとして、ラッセル・クロウの持つ存在感や雰囲気にピタリとハマって良い味を出していますね。

 

対照的に、どこか幼稚で未熟さを感じさせる皇太子・コモドゥスを演じるホアキン・フェニックスの好演もまた素晴らしい。

父の寵愛を受けれないもどかしさや、マキシマスと比べ劣っている才能を自覚しているが故のコンプレックスがあり、立ち位置としてはラスボスでありながらも多少の悲哀を感じさせる複雑な人物として描かれています。

高慢で姑息、プライドは高いけれども小心者という複雑で表現しづらい人物像ですが、表情の作り方や喋り方、そして振舞い方など、非常に高い演技力が垣間見えます。

 

 

総じて望まない運命に翻弄され、色々と失ってしまう二人の背景にはローマ帝国の崩壊があり、「国」として迎えた限界点が二人の人生を狂わせたとも言える脚本は実に見事なものです。

その重厚な脚本を見事に映像化させたリドリー・スコットの手腕には極めて高いセンスを感じさせますね。

 




 

 

まとめ

優秀な人物を妬む権力者の策略により身分を堕とし、そこからの復讐劇を描いた物語として特別な捻りはありません。

良くも悪くもオーソドックスな作品であり、誰でも理解できるであろうシンプルさ、それを補う映像の迫力は本物であり、深く面白い作品と言えるでしょう。

強いて言えばちょっと尺が長いのと、全体的に暗めな映画なので娯楽作品に馴れている人からすれば少々しんどい映画かもしれません。

 

素晴らしい美術を誇る作品として、迫力満点の歴史エンターテイメントとして、一度は手に取ってほしい作品です。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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