(原題:Glass)
2019年/アメリカ
上映時間:129分
監督:M・ナイト・シャラマン
キャスト:ジェームズ・マカヴォイ/ブルース・ウィリス/サミュエル・L・ジャクソン/アニャ・テイラー=ジョイ/サラ・ポールソン/他
2000年公開「アンブレイカブル」、2016年公開「スプリット」に続く、一連のシリーズ完結編となるSF寄りのサスペンス。
シャラマン監督が熱望しながらも興行的に振るわず、続編の話が出ては消えてを繰り返し、ようやく終わりを迎えた物語でございます。
前作「スプリット」がジェームズ・マカヴォイの怪演もありスマッシュヒットを記録し、やっとこさこぎつけた最終章ですが、またまた興行的には振るわず。
批評家からも厳しめな評価をくだされ、20年近く温めた作品としては、少々寂しい結果となってしまいました。
さっくりあらすじ
特殊な力を持つ中年男性・デイヴィッドは息子のジョセフと協力し、犯罪者を取り締まる活動を続け、いつからか監視者(オーバーシアー)の異名を持つに至った。
そんなある日、ケビン・ウェンデル・クラムという解離性障害の男が女子高生を監禁しているとの情報を得る。
しかし救助に向かった先でケビンの人格の一つ「ビースト」と戦闘となり、女子高生は逃がしたものの、直ちに駆け付けた警官により2人とも逮捕されてしまった。
2人が強制的に入院させられた精神病院には、嘗て事故を誘発し大量虐殺をしたイライジャ・プライスも入院しており、精神科医の責任者・エリーは彼らの治療を始めるのだが、、、
”監視者”として治安を守るデイヴィッド
散歩を通じて悪を討つ
デイヴィッドの対極に位置するビースト
己の存在意義に揺れる
3人同時にカウンセリング
彼らの力は本物なのか、、
練りこみ不足
そもそも最初は三部作とは知らず、「アンブレイカブル」で生まれた超人と「スプリット」で生まれた歪な超人の戦いに収束されていくと知った時はかなり興奮を覚えました。
ほぼ無敵の正義のヒーローvs多重人格の悪の権化、そして自身の目的のためには大量虐殺も辞さない黒幕の存在と、これは典型的なヒーローコミックの流れとなります。
そのため自然とデイヴィッドとビーストがどう邂逅し、どう戦って決着するのかにフォーカスする流れになりますが、そこにはシャラマン監督独自のエッセンスが漂いますね。
実際に作中では間違いなくヒーローやヴィランが登場しますが、映画を通してのテーマは「ヒーローは実在するのか?」の一点のみになるのでしょう。
シリーズを通しての人物設計や物語の背景など、非常に雰囲気があり、MCUやDCとはまた異なる切り口で描かれるヒーロー像は実に興味深いものだと思います。
が、面白かったのはここまで。
まずは小競り合いのような喧嘩を経て逮捕されるデイヴィッドとビーストですが、正気を疑われ精神病院へと収容されます。
そこで彼らの治療を受け持った女医が登場しますが、これが非常にクセの強い人物でして、ここらで作品の内容が斜め上へと向かい始めます。
というか、斜め上な演出のせいで今までのツッコミどころが噴出すると言った方が正しいか。
多々ある「ん?」と思うようなシーンは映画の雰囲気に飲まれ見て見ぬふりができたものの、女医による治療と称する拷問の数々によりおかしな点が看過できなくなるんですな。
一応女医の振舞いにも意味はあるのですが、終盤は完全に説明不足な感があり、どうにも色々と消化不良な印象が否めません。
例えば、、
明らかに部活動中だったであろう女子4人を、一体どうやって攫ったのか。
一般市民のデイヴィッドを自警活動をした罪で逮捕した上、人権無視で水責めまでする国家権力。
大量殺人の犯人として収監されたガラスに薬剤を投与し、強引に無力化させようとする女医。
凶悪犯のレッテルを貼ったくせに、思いっきり丸腰で彼らの部屋に入る職員。
100台の監視カメラは設置するが、夜間の見回りは1人で行かせる病院。
3人を呼びカウンセリングを行うも、1番ヤバそうなビーストは拘束せず、1番マトモそうなデイヴィッドを鎖で繋ぐ女医。
方法は不明だが、いとも簡単に部屋を行き来できるガラス。
フィラデルフィアで完成した最高峰の建物「大阪ビル」のネーミングセンス。
臨戦態勢に入る度に丁寧に上着を脱ぐビースト。
ヒーローの存在を許さない謎の超法規的集団だが、しっかりとタトゥーでメンバー確認。
超人的な戦闘力を持つデイヴィッドやビーストに対し、何故か肉弾戦を選ぶ警察。
などなど、本当に枚挙に暇が無いという感じ。
誤解しないで欲しいのは、決してつまらないのではなく、面白そうな展開に差し掛かる度に興ざめするポイントがあるということ。
正義と悪の超人対決のはずが、なんでか最終的には謎の集団vs超人の構図にシフトチェンジしているし、かといって深い内容があるほどの結末でもないし。
過去シリーズとの話の整合性を取るだけで精一杯と言う感じで、物語の奥深さが圧倒的に足りてないのが残念ですなぁ。
まとめ
とはいえ、シリーズ完結編としてはギリギリ及第点な出来ではあると思います。
面白いとは思わないけど、決して駄作だとも思わない、一番評価するのに困るヤツですな。
強いて言えば、結局ジェームズ・マカヴォイの七変化が最も印象的ですし、見所としてはそれくらいですかね。
過去作を観たのであれば、せっかくだからコレも観ておきましょう。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。