(原題:Ratatouille)
2007年/アメリカ
上映時間:112分
監督:ブラッド・バード
キャスト:パットン・オズワルト/ルー・ロマーノ/イアン・ホルム/ブライアン・デネヒー/ピーター・ソーン/ピーター・オトゥール/他
お馴染みディズニー&ピクサーによる長編アニメーション。
監督は「Mr.インクレディブル」「インクレディブル・ファミリー」や「トイ・ストーリー3」を手掛けたブラッド・バードが務め、見事アカデミー賞にて2度目の長編アニメーション映画賞を受賞しました。
恐らくはゴキ〇リの次くらいに、レストランでは忌み嫌われるであろうネズミが料理をするという奇天烈なアイデアを中心に、ピクサーならではの映像力で魅せる世界観はなかなかのもの。
人もネズミも生きていくにあたり、欠かせない他者とのコミュニケーションが招く複雑さを描いたドラマ風な側面にも注目です。
さっくりあらすじ
ネズミのレミーは優れた味覚と嗅覚を持ち、今は亡き天才料理人・グストーの様なシェフになることを夢見ていた。
嵐がやって来たある日、住人の老婆に(ネズミの)家がバレてしまい逃げることになり、その途中でレミーは群れからはぐれ、一人パリへと辿り着く。
そこで巡り合ったグストーの幽霊に導かれ、かつてグストーが腕を振るったレストランへとやって来たレミーは、母の遺言状を手にした青年・リングイニを目撃する。
雑用として働き始めたリングイニがスープを台無しにしてしまったのを見たレミーは、いてもたってもいられずスープを作り直そうとするのだが、、、
厳格な父ネズミ
人間の脅威と、ネズミの現実を誰よりも知る
グストーの店で働くシェフ達
前職が色々とおかしい
雑用係のリングイニ
ネズミが料理しているのを目撃し、、
ゲスい予定調和
まずはディズニー作品であるだけに、どう転んでも予定調和なハッピーエンドとなります。
これ自体は全く問題無いのですが、もう一人の主人公となる下っ端シェフ・リングイニの存在は、全く以て観ていて気分の良いものではありません。
とある事情でグストーのレストランで雑用として働くことになった、頼りなくヘラヘラした青年のリングイニですが、これがこのままのテンションで続いていくのが何だかね。
レミーが料理するのを目撃し、運よく一心同体として料理を作る機会をゲットするわけですが、ネズミが料理しているだなんて言えないがために名声は全て彼のものです。
それに対して労うことはあっても、深く感謝しているようには見えないですし、何よりもレミーの様にと努力する姿が皆無なのが極めて不快なんですな。
レストラン内では役職による序列が強いため、シェフであるスキナーの意見が非常に強い影響力を持ちます。
内心でグストーの店を自分のものにしようと企んでいたスキナーが分かりやすい”悪役”なため、子供としてはスキナーをやっつけて、リングイニを立てる物語に違和感は無いでしょう。
でも大人になるとね、そんな勧善懲悪に隠れたゲスさが目に付くわけで、やっぱりヘラヘラと嘘を重ねるリングイニの姿は認め難いものがありますよ。
とはいえ作品自体は実に魅力的で面白いものです。
シェフに憧れるレミーの姿は可愛らしくもユニークなものであり、料理する姿はもちろん、試食する姿は絵に描いたようなフランスのシェフそのものです。
美味しいものを作るのも食べるのも大好きなキャラクター性はとにかく愛らしく、シェフとして、またネズミ族の一員としての苦悩や葛藤はそれなりに魅せるドラマがあります。
序盤と終盤で描かれるネズミ全員集合は少々メンタルに来る感じもしますが、それを差し引いても魅力的なキャラクターじゃないでしょうか。
あとはフランス料理界の内情とか、細かく分かれたシェフの役職とか、知られざる厨房の世界は面白いですね。
各キャラクターは物語に深く関わるわけでもないですが、それぞれが歯車として料理を担当し、レストランを盛り立てる姿は実に興味深いものです。
また評論家や美食家と呼ばれるような人達の傲慢さ、嫌らしさが妙に生々しく現実的かなと。
あとはヒロイン的なポジションのコレットがとても素敵。
最初こそヒステリックでヤバい女性に見えましたが、料理に対する情熱やグストーに対するリスペクトは本物ですし、意外と押しに弱いあたりが萌えます(キモい)
バイクで颯爽と出勤し、白衣で包丁を握る姿はとても可愛らしく見えました。
まとめ
ディズニーであるだけに、予定調和な作風には変わりありませんし、先述したようリングイニがとても気に入りませんが、それでも面白い映画だと思います。
むしろ主役級のキャラがコレほどに魅力が無い上で、結果的に満足できるように仕上げたブラッド・バード監督の手腕を褒めるべきなんでしょう。
個人的にフレンチはあまり好みませんが、それでも食べてみたいと思わせる色鮮やかなラタトゥユにも注目です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。