レクイレム・フォー・ドリーム


(原題:Requiem for a Dream)
2000年/アメリカ
上映時間:102分
監督:ダーレン・アロノフスキー
キャスト:ジャレッド・レト/エレン・バースティン/ジェニファー・コネリー/マーロン・ウェイアンズ/クリストファー・マクドナルド/他

-Warning-

本日の「俺の映画が観れんのか!!」は
とてもテンションの下がる映画の紹介です。

生半可な気持ちで観ると後悔しますので
お気をつけください。

 

 




 

麻薬により人間が崩壊していくサマを描いた衝撃の作品、「落ち込む映画No1」にも輝いたきっつい映画です。

監督は「ブラック・スワン」で有名なダーレン・アロノフスキー、人の心理や嫌悪感を催す描写は一級品ですな。

 

合法ドラッグなんて言葉を聞かなくなって久しくなりましたが、芸能界を始め、合法ドラッグ→大麻→覚醒剤→合法、、という薬物汚染の螺旋が無くならない現代社会。

表面的にはドラッグの服用はもちろんのこと、そういった人間と関わるとロクなことにならんぞ、という啓発のような作品です。

人が中毒に陥るきっかけは何なのか?

クスリに手を出した人間がいかに悲惨な末路を辿るのか?

個性的な映像がマッチアップした、なかなかの傑作だと思います。

 

 

 

さっくりあらすじ

ニューヨーク・コニーアイランド在住の未亡人・サラは一日中ショッピング番組を見ているだけの孤独な女性。

一人息子のハリーは高校卒業後も定職に就かず、親友のタイロンと共にヘロインに溺れ、サラの大事なテレビまで質屋に入れてしまった。

ある日、視聴者参加型番組からの出演依頼が舞い込み、サラは張り切ってハリーの卒業式の時に来た赤いドレスを着ようとするが、食べて寝るだけの日々のせいで太ってしまい、どうしてもドレスを着ることができない。

ハリーはタイロンとヘロインの密売を始め、恋人・マリオンと一緒に洋品店をオープンする夢を抱くも、ギャングの罠にはまり銃撃を受けた挙句タイロンは逮捕され、保釈金を支払い資金は全て無くなってしまう。

一方サラはより高いダイエット効果を得るため、医師の言いつけを守らず多量のダイエット・ピルを服用するのだが、、、

 

 

 

 

TV出演の夢を叶えたいサラ

 

自身の店を持つ夢を抱くハリーとマリオン

 

”クスリ”が全てを壊す

 

 

 

 

心の隙間を埋めるもの

まず重たいテーマを据えた作品にしては102分とタイトな編集で、鬱っぽい物語に反してテンポ良く、切れ味鋭い仕上がりになっております。

また本作は「鬱な映画」で有名になってしまったため、やや捻じ曲がって評判が伝わってしまいましたが、薬物の恐ろしさだけを描いた映画ではなく、人の心の闇を紐解いた複雑なドラマだということも加えておきます。

むしろ「鬱度」だけで言ったらもっとひどいのは結構あるしね。

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」とか、「隣の家の少女」とか、「ファニーゲーム」とか。。

 

物語の解釈は人それぞれではあるでしょうが、最も切なく、また恐ろしいと感じる点は薬物中毒に陥る人の心理にあります。

特に最も印象に残る母・サラには友人と呼べそうな仲の知り合いがいたにも関わらず、それを「他人」と位置づけ、結果的に孤独に苛まれTVだけが生き甲斐という寂しい人生になってしまいます。

そんな折に舞い込んできた出演依頼により、いかなる犠牲を払おうとTVに出演して脚光を浴び、赤いドレスを着て息子のことを語ることだけが夢となり、生きる上での糧になるわけです。

 

傍から見ればくだらないことでも、本人だけは価値を見出す物事があるのはよくある話ですが、妄信的にそれを追いかけ続け、孤独の螺旋にハマってしまうのはある意味で薬物よりも恐ろしいものです。

主要な4人の登場人物の中で、唯一サラにだけは涙を流してくれる友人がおり、自分の助けを必要とされず、取り返しのつかない事態に陥ったことを嘆く姿はなんともやりきれない哀しさがありますよね。

 

ちなみにサラを演じたエレン・バースティンの演技は凄まじく、悲惨な結末を迎える中年女性として、記憶に残る存在感は極めて秀逸です。

 

 

 

 

”中毒”や”依存症”というのはある種の現実逃避に用いるツールとも言えます。

つらい現実。

しんどい社会生活。

埋められない孤独。

そういった要素を緩和するためにタバコやお酒やスマホ、果ては自傷や薬物まで、、程度の差はあれど根っこは皆同じベクトルのものだと思います。

筆者みたいな仕事漬け、空いた時間は映画とゲームという生活も立派な中毒だと言えるでしょうし、そういう意味では現代社会で生きる人々は皆少なからず本作の登場人物になる可能性を孕んでいると言えるのではないでしょうか。

 

要は「心」の話ですよね、たまたまテーマが「薬物依存」だっただけで。

ただ観る人によっては「自業自得」の一言で終わってしまいそうなところでもあり、そういった面もいかに”中毒”が遠くて身近なものなのかを表しているようにも思いますが。。

総じて、決して気分の良い作品とは言えませんが登場人物の”心”の在り方に注目して観てもらえれば、作品を通して何を伝えたいのかは理解できることでしょう。

あ、あとついでに小ネタですが、クスリ欲しさに売春した恋人・マリオンを演じるジェニファー・コネリーですが、「スパイダーマン:ホームカミング」にてスパイダースーツのAIを担当しております。

 




 

まとめ

独創的なカメラワークと映像表現、全ての役者の熱演により非常に完成度が高い作品です。

感じ方は人それぞれですし、やはり楽しい映画ではないので万人にはオススメできませんが、それを差し引いても傑作と呼べる映画だと思います。

ついでに麻薬を使用するのも取引するのも、タバコや酒のような気持ちで手を出すのがどれだけ危険なことなのか、作品を訴える側面も忘れてはいけません。

 

もうハリポタ祭りとかマジで飽きたし、こーゆー映画を地上波で放映するのは意味があると思うんですけどね。

やっぱり無理ですかねぇ。。

ちょいと古い作品なので微妙に手にはいりづらいですが、一度は観る価値のある作品だと断言できます。

 

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

おまけ

ダーレン・アロノフスキー監督は「PERFECT BLUE」のファンなんだそうで、本作に於いてオマージュとなるシーンを盛り込むために6万ドルも出してリメイクの権利を買い取ったんだとか。

 

 

 

 



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