(原題:Shine)
1996年/オーストラリア
上映時間:105分
監督:スコット・ヒックス
キャスト:ジェフリー・ラッシュ/ノア・テイラー/アレックス・ラファロウィッツ/アーミン・ミューラー=スタール/リン・レッドグレイブ/ジョン・ギールグッド
ピアノの音が好きで、ピアニストという職業に強い憧れがあります。
不幸なことに運動神経以外の才能を持たずに生まれてきたので、憧れ以上になることはありませんでしたが(T_T)
デイヴィッド・ヘルフゴッドという、実在するピアニストの半生を描いたヒューマンドラマです。
実際はかなり脚色されているらしいですが、しかし映画で語られる、美しい音色で奏でられる彼の半生はとても美しく、そして儚いものです。
「パイレーツオブカリビアン」のバルボッサ役で有名なジェフリー・ラッシュは、この映画で見事アカデミー主演男優賞を獲得。
(作品賞、監督賞、助演男優賞、脚本賞、音楽賞、編集賞にもノミネート)
劇中では主役のデイヴィッドを演じ、精神疾患を乗り越え、最愛の女性と最愛の音楽と共に明るく生きようと努める彼の演技は涙腺崩壊ものです。
味のある素晴らしい俳優ですね。
さっくりあらすじ
ある雨の晩、客で賑わうレストランの窓を叩く中年の男がいた。
挙動不審な彼はピアノを見つけると周りの嘲笑も気にせず、ずば抜けた演奏を始める。
時を遡りデイヴィッド・ヘルフゴッドは厳格な父の英才教育のもと、ピアノの天才少年として有名だった。
しかし自分から子が離れて行くのをよしとしない父親は薦められたアメリカ留学を断り、イギリスの王立音楽院への留学さえも断ろうとする。
父親の反対を押し切り、半ば家出状態でロンドンへ渡ったデイヴィッド、恵まれた環境と著名な音楽家の指導によりその才能はさらに磨かれていく。
そして迎えたコンクール、難曲といわれている「ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番」を弾き始めるのだが、、、
度肝を抜くような超絶ピアノ演奏。
ちなみに違う世界では海賊だったり。
こちらはご本人様。
ちょっと似てる(笑)
“凡人”による”天才”の教育
自身の生い立ちのせいで生まれたコンプレックスや、劣等感を抱えながらも厳格に振舞うデイヴィッドの父親・ピーター。
その反面で、息子を一流のピアニストに育て上げたいという気持ち自体はとても純粋なものです。
しかし、いざ息子が羽ばたこうとする姿、自分の手を離れていく姿はやはり彼のコンプレックスに触れたのかもしれません。
深い葛藤の末に、何をすべきかを見失った父親の姿は哀れで、内面の複雑な気持ちを形にできないもどかしさを感じます。
対して息子のデイヴィッドも父の期待に応えるため、精一杯の努力を重ねていたはずです。
しかし、成長するにつれ音楽家としての器が父親を超え始めたあたりから、状況は変わります。
デイヴィッド自身にも自我が芽生え始め、言うことを聞かなくなってしまうんですな。
物語の根底は父と子の音楽を通しての軋轢、すれ違い、葛藤が描かれます。
その上でのドラマとして、父親の鎖を解かれ自由を得たた天才の覚醒や、それ故に生まれる苦悩などがメインテーマといったところでしょうか。
デイヴィッドの晩年を演じるジェフリー・ラッシュの演技は本当に素晴らしいの一言。
神経症を患い、本当にピアノを弾くことしかできない彼が、真っ直ぐに人を愛し音楽の中で生きる姿。
ようやく開催できたコンサートで万雷の拍手を浴び、感情をうまく表現できずにむせび泣く姿はものすごく感動します。
「本当に良かったね」と声をかけてあげたいくらい(*T▽T*)
父親・ピーターを演じるアレックス・ラファロウィッツも迫真の演技が素晴らしく、普通にムカつきます。
(褒め言葉)
博識で良い父ぶってるくせに、罵倒するわ折檻するわ。
こんなジジイ殴っちまえと言いたくなるような頑固親父の姿はこの映画に必須の要素だったと思います。
あ、あと青年期デイヴィッドを演じたノア・テイラーも素敵。
クセのある雰囲気イケメンて感じで、ピアノを離れるとオドオドするような、見るからに人と話すのが苦手そう。
何とも言えないナヨい演技が秀逸です。
まとめ
親子の関係って難しいですよね、実際。
お互い選べないのは仕方ないことですが、譲り合いや助け合い、理解しあう姿勢が無くなってしまうと本当に親子の絆って脆いものだと思います。
デイヴィッド・ヘルフゴッド氏の複雑なストーリーに、美しい調べをのせて。
訪れた不幸を乗り越えようと苦悩する姿や、愛する人やものに囲まれて生きていける幸せを描いた素晴らしい作品です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。
おまけ
デイヴィッドさんは現在(2015年)68歳!今も現役で演奏活動を続けているそうな。
ちなみにYouTubeにて演奏を聴くことができます。