(原題:The Sapphires)
2012年/オーストラリア
上映時間:103分
監督:ウェイン・ブレア
キャスト:クリス・オダウド/デボラ・メイルマン/ジェシカ・マーボイ/シャリ・セベンズ/ミランダ・タプセル
1960年代に実在した、アボリジニの歌手グループ「ザ・サファイアズ」を描いたノンフィクション・ヒューマンドラマ。
で、唐突ですが皆様「アボリジニ」って聞いたことはあると思いますが、正確な意味はご存知でしょうか?
厳密には先住民族全般や土着の動植物も含め総称として使われる言葉ですが、現在はオーストラリア先住民を指す言葉として定着しつつあります。
ちなみに差別的な意味合いが強い言葉なので、面と向かって言ったらダメだよ。絶対。
さっくりあらすじ
1960年代のオーストラリア、アボリジニ居住区に住む3姉妹のゲイル、シンシア、ジュリーは歌唱コンテストに参加する。
しかし明らかに歌唱力で上回っているはずなのに先住民族であるがゆえに差別を受け、コンテストはあっさりと落選してしまう。
それを目の当たりにした酔っ払いのピアニスト、デイブはその歌声に目をつけ声をかける。
さらに同化政策により家族から引き離されていた3姉妹のいとこ、ケイを引き込みソウルミュージックグループ、サファイアズを結成する。
そしてマネージャーとなったデイブと共にアメリカ軍の慰問ショーの仕事でベトナムまで行くことになるのだが、、、
恵まれた歌唱力を誇るサファイアズ
慰問ショーのため、前線を移動する御一行様
こちらは御本人様
実在したサファイアズ
ここで少しだけ世界史のおさらい。
1800年代に入ると本格的にイギリスによる入植が始まり、もともと住んでいたオーストラリア先住民たちは狩りの対象として見なされていました。
イギリス人兵士には彼らを自由に捕縛・殺害できる権利があるなど、お前ら本当に紳士の国の人間かと問いたくなるようなことを平気でやっていた時代が本当にあったわけですな。
まぁこの手の話は先進国にはどこの国にも少なからずあるもんではあります。
が、入植から100年後には100万人くらいいたとされているアボリジニは実に7万人まで激減したそうです。
どう見ても非人道的な行為としか言いようがないよね。
そして1920年代以降に入り、ようやく先住民族の保護政策が始まるも、どちらかというと隔離的な意味合いが強く、理不尽な虐殺が終わったら次に待っているのは強烈な差別。
さらに同化政策と称して、色白に生まれた先住民は無理やり親と引き離され粗悪な施設に入れられるなど、まだまだ苦しい時代は続くわけです。
こうして書いてるだけでムカムカするようなことを、時として人間は平気でやってしまうもんです。
悲しいかな、こーゆー話は歴史を掘り返すと腐るほど出てきますよね。
集団心理というか、みんなでやれば怖くないというか。
明らかに間違ってることでも多数派になった瞬間正当化され、罪悪感が無くなってしまう。
そうなってしまう前に人の痛みが分かる、平等に誰とでも接することのできる器の大きな人間になりましょう。
そしてそのために観てほしい作品だと心から思います。
本作の脚本家トニー・ブリックス氏の母親が”サファイアズ”というボーカルグループを結成していたそうで、その体験記から作られたお話です。
明るい雰囲気の映画ではありますが、劇中で映されるのは露骨な差別、誘拐まがいの国家政策、口汚いアメリカ軍の白人兵士など。
「文化」の意味って何だっけと考えさせられると共に、音楽という”ソウル”を胸に逆境も差別にも屈しない陽気なサファイアズの強さにただただ胸を打たれるばかりです。
映画としてはドキュメンタリーを背景にしたヒューマンドラマといった味付けで、ノンフィクション作品にありがちですが可もなく不可もなくといったところ。
ぶっちゃけ特別面白いような作品とは言えず、良くも悪くも平均的な映画かなというのが本音ですかね。
ただ個人的には「カムバック!」や「ヴィンセントが教えてくれたこと」にも出演したクリス・オダウドの演技が見どころと言えますかね。
日本では無名な俳優ですが、コメディからシリアスまで、幅広く演じられる素晴らしい俳優です。
まとめ
何せ映画なので色々と脚色はしてあるだろうしご都合的な描写も無くはないです。
そこはほら、つまらんことでガタガタ言うのはナンセンスってもんですよ。
大小の差はあれ人生ってなかなかつらいものです、でも大切なのは心の強さと人を思いやれる優しい気持ち。
この映画を観て少しでも笑ったり感動したりしたならば、明日からみんなに優しく接しましょう。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。
おまけ
オーストラリア先住民は飲酒の文化が無く、遺伝的にアルコールを分解する力が極端に弱いんだそうな。