サウスポー 


(原題:Southpaw)
2015年/アメリカ
上映時間:123分
監督:アントワン・フークア
キャスト:ジェイク・ギレンホール/フォレスト・ウィテカー/レイチェル・マクアダムス/ナオミ・ハリス/カーティス・ジャクソン/他

 




 

絶大な人気を誇ったボクシング王者が転落し、その再生を描いたスポーツ・ドラマ。

イコライザー」や「マグニフィセント・セブン」を手掛けたアントワン・フークアが監督を務めます。

 

映画そのものも当然面白いんですが、何よりも目を引くのが極限まで鍛え上げられたジェイク・ギレンホールの肉体美、、ふぅ

憑依型俳優の典型例ではありますが、本作への参加が決まると週7日のトレーニングを6カ月間続けたそうで、スタント無しでボクシングの撮影に臨んだそうな。

また、なんでかフークア監督も一緒にトレーニングに参加したそうで、変態俳優と変態監督による二重奏は観て損の無い濃ゆい内容となっております。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

無敗の世界ライトヘビー級王者であるビリー・ホープは壮絶な打ち合いを演じるファイトスタイルで絶大な人気を誇っていた。

愛する妻・モーリーンと娘・レイラにも恵まれ、ボロボロな体になりながらも幸せな日々を送っていたが、チャリティ・パーティーへ出席した際にライバル選手から挑発を受ける。

短気な性格のビリーは挑発に乗り乱闘へと発展してしまい、いざこざの中で発砲された弾丸がモーリーンに命中し、彼女は帰らぬ人になってしまった。

妻を失った事や財産が残っていないこと、さらに敗北を喫したことで自暴自棄になったビリーは自殺未遂を起こし、1年の謹慎期間を課せられた上にレイラとも離れた生活を送ることになる。

何もかもを失い、ようやく再起のために立ち上がったビリーは以前に自分を苦しめた選手のトレーナーを務めたティック・ウィルズを訪ねるのだが、、、

 

 

 

 

派手なパンチの応酬が人気のビリー
妻はビリーの安全を願い、見守る

 

その妻を亡くし、娘と離別し
人生のどん底に

 

未来のため、娘のため
ビリーは再び立ち上がる

 

 

 

 

拳に人生を懸けて

ボクサーの転落と再生を描くドラマ性が中心でありながらも、ボクシングを詳細に描いたスポ魂なテイストも実に見事なもの。

かの名作「ロッキー」とはまた違うベクトルで、極めて深い余韻に包まれた傑作だと思います。

 

リングの上ではスーパースターでありながら、実生活では体はボロボロ、常にくたびれた雰囲気のビリーの背中には哀愁すら漂っています。

周りのスタッフやプロモーターも王者であるビリーを持ち上げこそすれ、心から信頼できるパートナーと言えるような立場ではなく、あくまでビジネス上の付き合いであるわけで。

試合前にビリーを抱きしめ、怪我の無いように念を押す妻の姿がとにかく印象的で、彼を支える力の源は”家族”だけであることが見て取れます。

 

しかし、そんな心の支えを失ってからは生活が一変し、雪崩式に堕ちていくビリー。

非常に輝かしいキャリアの持ち主ではあるものの、決して最強のボクサーだったわけではなく、対戦相手を選ぶことでチャンピオンの座を守っていたことが吐露されます。

大事な思い出が残る家を手放し、プロモーターが離れ、取り巻きが離れ、法的な手続きにより娘も離れ。

演じるジェイク・ギレンホールの卓越した演技力もあり、悲しみと怒りが混在した狂気に駆られる姿は、もう本当に観ていてつらい。

 

 

そして後半、少しずつ冷静さを取り戻し、何をすべきか見直すことから物語は再び動き始めます。

かつて自分を苦しめた(実質勝っていた)選手を鍛えたトレーナー・ウィルズの元へと出向き、雑用をしながらも再びボクシングを始めるビリー。

聖人君子ではなく妙に人間臭く、それでいて語る言葉に本質を含ませるウィルズを演じるフォレスト・ウィテカーの演技も流石の一言。

「怒りに身を任せ攻撃的になるのではなく、まずは自分を守れ」というアドバイスは決してボクシングだけの話ではないのでしょう。

 

で、ここからはボクシングのスキル的な演出が中心になるわけですが、コレがすごいのなんの。

先述したように限界までビルドアップした肉体もさることながら、ステップ、身の躱し方、パンチのフォームと、どれも身についているんですよね。

斜に構えたデトロイト・スタイル(ヒットマン・スタイル)とか、ボクシング好きのツボが抑えられているんですわ。

 

どれほどハードな特訓を課してきたのか想像もできない程に、ナチュラルにボクシングを演じるジェイク・ギレンホールの役者魂に脱帽です。

また何だかんだ言っても結局、最大の見せ場はリングの中であると理解しているフークア監督のセンスも実に素晴らしいものでしょう。

 




 

 

まとめ

映画としては特別な捻りは無く、良くも悪くも直球勝負、小細工はありません。

栄光→転落→復活と、超が付くほどのストレートな映画を丁寧に、手堅く仕上げた故の魅力だと思います。

最近は冒頭の掴みにフォーカスしたり、構成を捻り過ぎて着地できなかったり、本末転倒な作品が散見されますが、そんな中で映画とはどう作るものなのかを示すような内容だと思います。

身も蓋も無いですが、良い役者を用意し、それを活かす監督を使う、コレに限りますな。

 

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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