(原題:Thor:The Dark World)
2013年/アメリカ
上映時間:112分
監督:アラン・テイラー
キャスト・クリス・ヘムズワース/ナタリー・ポートマン/トム・ヒドルストン/アンソニー・ホプキンス/ステラン・スカルスガルド/イドリス・エルバ/他
単体シリーズ2作目にしてMCU8作目になります。
こちらも「アベンジャーズ」の後日談から続いた物語となっており、主に地球が舞台だった登場作品と比べ、VFXを贅沢に用いた異世界の描写が多めなのが特徴的でしょうか。
「アイアンマン3」にも言えることですが、フェイズ2に入り初見の方には世界観の理解が難しくなってきております。
マーベル・シネマティック・ユニバースという、一連の流れに沿って作られた壮大な物語はやはり最初から観た方が楽しめるでしょう。
むしろ一見さんにはそろそろ取っ付きづらくなってきているかな、と。
さっくりあらすじ
宇宙が誕生する以前、闇から生まれたダークエルフ達の支配者・マキレスはインフィニティ・ストーンのひとつである”エーテル”を使い、宇宙を再び闇に沈めようとした。
しかし全能なる神・オーディンの父・ボー率いるアズカルド軍によりエーテルは奪われ、地中深くに埋められダークエルフ達も何処かへと消えていった。
アベンジャーズに敗れたロキはアズガルドの牢に入れられ、ソーは惑星直列により起きた紛争の収拾に当たっていた。
研究のためロンドンを訪れていたソーの恋人・ジェーンは惑星直列の影響で不安定になった世界の境目を発見し、その中に吸い込まれてしまったことでアズガルドへと転移し、そこでダークエルフに接触する。
ヘイムダルの助言でジェーンと接触したソーだったが、彼女の異変を感じアズガルドへと連れて帰るのだが、、、
王たる器を得たソー
ダークエルフの支配者・マキレス
異世界へ連れてこられたジェーン
出番は少な目
妥当な仕上がり
本作に於いての見どころは何よりも美麗なCG演出だと思います。
アスガルドでの展開が多めで美しい世界観が楽しめる反面、映画全体としては特別印象に残るものが無いという何とも微妙な仕上がりとも言えます。
マイティな神様・ソーが筋肉とハンマーにモノを言わせて大暴れするような内容ではなく、どちらかと言えば内面、つまり人同士の因果や感情の揺れ動きなどにフォーカスしているためです。
愛する者を救うために力だけではなく知恵を使うことを学び、前作で得た「王の器」から「正義の味方」へとシフトしていく物語なわけですな。
つまりソーの故郷に於いて、ソー自身の身の振り方というか、自分がどうありたいかを描いた物語という意味では「マイティ・ソー」というコンテンツに求める期待とは若干の温度差があると思います。
さらに、もう一人の主人公とも呼べるロキにもフォーカスされています。
トリッキーな知略の神であるロキですが、前作で描かれた通り複雑な出自を持っているわけですが、その「形」の上での親子関係は彼に深い傷をもたらしていました。
父・オーディンと兄・ソーに対する反抗心からなのか、はたまたトリッキーな神ゆえの悪戯なのか、いずれにせよ取り返しのつかない事態に陥ったロキの覚悟と決意が非常に印象的です。
「コンプレックスを抱えた反抗期」という人間臭い魅力を持つロキを演じるトム・ヒドルストンの好演もあり、主人公を差し置いて最も目立っていたのではないでしょうか。
そんなソーとロキ、それぞれの確立されたキャラクターの深まりを楽しむのが通な作品と言えます。
演出面としては純粋な戦闘力のインフレを抑えるためか、異次元バトルを導入した結果、爽快感には欠けるように思います。
ダイナミックでパワフルな描写は相変わらずですが、地球と異世界と宇宙を股にかけた戦いは忙しなく複雑であり、面白いんだけど観づらいかなと。
むしろ主人を求めてあっちこっちに飛び回るハンマーに萌える始末で「ルンバ的な可愛さがあるなぁ」くらいしか印象に残ってません(笑)
ダークエルフも極めて強力ながらもあまり個性を感じず、敵としての魅力もイマイチだったかな。
ついでに言えば前作ではまだ見せ場があった浅野忠信がほぼ空気になっているのもちょっとだけ残念。
まとめ
アクション性は派手にはなったものの、内容的には前作と同等くらいかな。
先述したように美しい世界観と、キャラクターの内面にフォーカスした作品になっているのでそこを期待した人にはあまり面白くないかもしれません。
とはいえ、シリーズ全体の一部と考えればソーの成長を描いた作品であり、これからの彼の活躍を期待するに外せない内容だとも言えます。
ひとつの映画としてはちょっと微妙、でもコンテンツ全体の中ではそれなりに大事な物語ということですな。
「アベンジャーズ」エピソードの一つとして、シリーズを追いかけている人にはそれなりに面白いと思います。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。