(原題:Wonderlust)
2012年/アメリカ
上映時間:98分
監督:デヴィッド・ウェイン
キャスト:ポール・ラッド/ジェニファー・アニストン/ジャスティン・セロー/アラン・アルダ/マリン・アッカーマン/ジョー・ロー・トルグリオ/他
2人の関係が冷え始めたカップルが、ヒッピーコミュニティに出会うことで愛を取り戻していくロマンス・コメディ。
こう書くと真っ当な恋愛映画に見えますが、久しぶりにくだらない映画を観た満足感に包まれております(笑)
ちなみに日本ではビデオスルー(劇場公開無し)だったそうです。
「アントマン」で有名ですが、コミカルな演技を持ち味とするポール・ラッドと、「モンスター上司」や「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」など、コメディからドラマまで器用になんでもこなすジェニファー・アニストンのW主演となります。
至って普通なカップルが都心に住む難しさ、それらを全て捨てたヒッピーという生き方、現代の不景気社会に生きる我々としては少しだけ響くものがある気がします。
多分。
さっくりあらすじ
思い切ってマンハッタンの狭小アパートを購入したジョージとリンダだったが、ある日にジョージが仕事を解雇されてしまった。
仕方なしに折り合いの悪いジョージの兄の住む南部へと身を寄せることになるが、その移動中に怪しげなヒッピー・コミュニティと遭遇する。
あまりにも自由な彼らの暮らしぶりに戸惑う2人だったが、何にも縛られない彼らの姿を見て、徐々に2人も感銘を受けていくのだが、、、
トラブルが続き
微妙に気持ちがすれ違う2人
出会ったヒッピーに感化され
2人の中も改善されていく
そしてリンダはどっぷりハマる
ヒッピー・カルチャー
知っているようで、よく知らない、でも大体予想通りというヒッピーな生活が作品の背景となります。
しかし文化的な意味合いが掘り下げられているわけでもなく、あくまでコメディの下地として演出されているだけではありますが。
コメディでこそ最も輝きを放つポール・ラッド然り、いつでもどこでも堂々たる脱ぎっぷりを発揮するジェニファー・アニストン然り、彼らの魅力を活かすデヴィッド・ウェイン監督の手腕はなかなかのものです。
ちなみにロマンス・コメディとは言いましたが、割合としては7:3くらいでコメディが強めであり、しかも品の無い台詞がバンバン飛び交うので苦手な人も少なからずいるでしょう。
筆者は大好物ですが。
生真面目で堅実なポールと、自分の趣味を仕事に繋げようと模索するリンダの対照的なキャラクター性も良い塩梅。
冒頭のマンション購入からしてそうですが、資産価値などを考慮しながら投資を考えるポールと「美味しいカフェが近いから」で判断するリンダと、仲良しでも喧嘩の種になりそうな演出がさりげないんですよね。
そんな2人が自由に暮らす集落に迷い込み、心地よさを感じながらも再起を目指すポールと、どっぷりハマるリンダの温度差も面白いものです。
で、実際のヒッピーの生活になぞらえたであろう生活感ですが、これがどれも面白いんですな。
菜食主義に始まり、あらゆるもの(彼氏も妻も)を分け合い、怪しい薬物を摂取してはトリップし、果てには新生児の胎盤でスープを作ろうとしたり。
くだらなくて笑えるものから、割とマジで引くものまで、実にバラエティ豊かです。
オーガニックやらロハスやら、スピリチュアルに通ずる人生観は否定しませんが、現代社会にどっぷり浸かっている身としては受け入れがたい感性もしばしば。
「気に入れば誰とでもフリーセッ〇ス」なのも魅力的ではありますが、この程度の衛生観念で実践すれば性病の嵐に巻き込まれそうですしね。
そもそも冷静に考えれば矛盾だらけな価値観でもありますし、それが分からぬままこういった生活にハマるとすれば、やはり通常の精神状態ではないのでしょう。
あとはポール・ラッドがひたすら恥ずかしい台詞を言わされるシーンとか、ジェニファー・アニストンの安定のヌード(モザイクあり)だとか、良い意味で印象的な笑いが素敵です。
特にポール・ラッドが鏡に向かって自分を奮い立たせるシーンなんかは個人的にかなりツボでしたし、英語のニュアンスが分かる方にはぜひとも観ていただきたい。
いじられキャラというか、自ら笑いを発信するタイプではないですが、巻き込まれ系ギャグ要員としての存在感は格別ですよ。
字幕や吹き替えでは伝わらない絶妙な笑いがあります。
まとめ
観るべき映画とまでは言いませんが、観て欲しい良作コメディです。
エンドロールで流れるNGシーンも含め、非常に良質な大人の笑いが詰め込まれていると思いますし、大笑いではなく含み笑いを連発する作品としての完成度は高いと思います。
ただし、ちょっとアダルト寄りなのでお子様はやめときましょう。
心地よいユーモアは観る価値があります。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。