(原題:Under the Silver Lake)
2018年/アメリカ
上映時間:139分
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
キャスト:アンドリュー・ガーフィールド/ライリー・キーオ/トファー・グレイス/ゾーシャ・マメット/キャリー・ヘルナンデス/他
ロサンゼルス近郊を舞台に、失踪した女性の行方を捜すサスペンス・コメディっぽい何か。
近代ミステリーの傑作と評される「イット・フォローズ」を手掛けたデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督作品ということで、にわかに注目しておりました。
主演は「アメイジング・スパイダーマン」や「ハクソーリッジ」などで活躍し、2018年にはトニー賞も獲得したアンドリュー・ガーフィールドが務めます。
いやね、前作が面白かったもんだから、かなりハードルを上げて観たのは否めないんですが。
先に結論を言えば相当に上級者向きな、初心者お断りの難解な映画でしたよ。
さっくりあらすじ
人生の目的を見いだせず、怠惰な日々を送るサムは隣に越してきた美しい女性・サラに一目惚れをする。
つまらない日々が一転して明るくなったのも束の間、突然サラは失踪し、アパートも引き払い空室になっていた。
どうしても諦めのつかないサムは彼女の行方を追うが、その内に何かの陰謀に巻き込まれていくのだが、、、
冴えない無職の青年・サム
怠惰な日々を送っている
隣に越してきたサラ
突然失踪した
サラ失踪の真相を掴むため
様々な人にアプローチするが、、
比喩×暗喩×暗示=意味不明
えーとですね、何からツッコめばいいんだか迷うところですが、至って普通の視点で観れば、恐らくは半分も理解できずにエンディングを迎えることでしょう。
ダラダラと時間を浪費するしょーもない青年・サムが失踪した女性を探す物語ではありますが、土台からして色々とおかしいんですわ。
まず無職の人間が、家賃すら滞納している男が車でアチコチと嗅ぎまわるわけですが、日々の生活費はもちろんのことどうやってガソリン代を確保しているんだと。
大都会ロサンゼルスのセレブパーティーに頻繁に参加している割には極めてみすぼらしく、華やかな将来を目指して燻っているおバカな人々の中でも群を抜いてヤバい人に見えるわけですな。
セレブリティの中にホームレスみたいな男が紛れているように見えますし、でもそれに対して誰も気にするでもないですし、拭えない違和感が常に付きまとっている感じ。
ついでに住人のほとんどに貞操観念という概念はなく、トップレスでベランダに出るわ、誰とでも関係を持つわで色々とおかしいんですね。
いくら開放的な人が多い西海岸とはいえ、さすがにここまでイカれた人々がそこら中にいることは無いのではと思います。
つまり、物語の舞台となるシルバーレイクという土地、並びにそこに住む人々を含む主人公の人間関係全てが虚構のような存在感であり、まずそこを理解できないと本当につまらない作品だと思います。
何かを暗示するような演出が極めて多く、また何かを示唆するような比喩表現も多く、次から次へと生まれる謎に翻弄されることになります。
途中からは主人公・サムの異常っぷりも垣間見え、現実に起きていることなのか、はたまた彼の妄想なのかすら判断が難しく、鑑賞しながらの考察を強要されるために心底疲れますよ。
そんな失踪事件を追うと共に、土地にまつわる都市伝説や陰謀論、果てはカルト的な伝説までを絡ませていくのですが、これがまた難しい。
相次ぐ富豪たちの失踪事件や地下帝国の存在、ホームレスの王や夢魔のようなフクロウ女の存在など、素っ頓狂な話を大真面目に紐解いていく感じ。
こういった都市伝説に真っ向から向かい合うロマンは面白いと思うのですが、いかんせん不明瞭な物語の土台があるだけに、どうにも理解が追い付かないんですよね。
突発的に演出される意味不明なサプライズ、エロ、暴力と、どれを取っても意味不明。
何かを示唆しているであろうことは想像できますが、それが何なのかはよく分からない。
ちょっとした小ネタで笑えるところはあるにしても、全く笑いの質が理解できない人も少なくはないでしょう。
とにかく難解でディープ、一応の物語の収束は見られるものの、清々しいまでに一見さんお断りな内容はかなり賛否が分かれそうです。
まとめ
とはいえ、観終わってみれば「つまらなくはない」気がする不思議。
内容に理解が追い付かなくとも、何故か魅力的に見える後味が不可思議な作品ですな。
それこそがデヴィッド監督の持ち味なのかもしれません。
ただし、初心者~中級者までの人であれば大体がつまらない映画になってしまうとは思います。
かの迷作「マザー!」とはまた異なるベクトルの意味不明系映画なので、間違いなく人は選ぶでしょう。
オススメはしづらい映画ですが、映画オタク系にはハマります。
よければ一度ご覧くださいませ。