(原題:Contraband)
2012年/アメリカ
上映時間:109分
監督:バルタザール・コルマウクル
キャスト:マーク・ウォールバーグ/ケイト・ベッキンセイル/ベン・フォスター/ジョヴァンニ・リビシ/ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ/他
トラブルに巻き込まれ、運び屋がパナマからアメリカへの密輸に挑むクライム・アクション。
2008年にアイスランドで製作された映画のハリウッド・リメイクだそうです。
主演はお笑いからサイコパスまで、何でも器用に演じ分けるマーク・ウォールバーグは2017年に「最も稼いだ俳優」に選出され、現在では最も売れっ子俳優の一人と言って良いでしょう。
脇を固めるは「アンダーワールド」の美人吸血鬼でお馴染み、超絶美脚女優のケイト・ベッキンセイル。
数々の出演作の中でも「セッション」の鬼教官が印象的なJ・K・シモンズ。
「60セカンズ」以降、数々の映画で脇役を務めるジョヴァンニ・リビシ。
「ブラッド・ファーザー」や「ローグワン」など、メキシコの優男代表、ディエゴ・ルナ。
などなど、誰もが独特の魅力を発揮する、素晴らしいキャスティングであります。
特別優れたアイデアがあるような作品ではないですが、非常に安定感のある面白みはこの俳優陣によるところが大きいでしょう。
さっくりあらすじ
ルイジアナ州・ニューオーリンズで凄腕の運び屋として有名だったクリスは密輸業から引退し、妻のケイトや2人の子供と共に幸せな日々を過ごしていた。
しかし、ケイトの弟・アンディは船でのコカインの密輸中に海上捜査隊に出くわし、証拠隠滅のためにコカインを海に捨ててしまう。
密輸を依頼していた犯罪組織は激怒し、70万ドル相当の補償を強要されたクリスは嘗ての仲間を呼び寄せ、偽札の密輸を計画するのだが、、、
ヤバい仕事から足を洗い
防犯設備業を始めたクリス
しかし義弟がヘマをやらかし
借金を背負うことに
貨物船に乗り込み
偽札の密輸を始める
ハリウッド風の欠点
どこの国でも防ぐべき問題の一つであろう、密輸。
そんな社会派なテーマでありながらも、得意のドンパチ系に塗り変えてしまうのがハリウッド風の味付けなのであります。
本作もその例に漏れず、密輸をしなくてはならないトラブルに始まり、貨物船を利用するHow to 密輸に続き、緊張感溢れる終盤へと続いていきます。
先述した通りキャスティングは実に素晴らしいものですが、量産型クライム・アクションの域は出ておらず、面白いけれども印象には残らない作品ですな。
物語としては、アホな弟のせいで借金を返す羽目になり、密輸のために乗り込んだパナマで更なるトラブルに見舞われるという流れ。
善人にも、悪党にも見えるマーク・ウォールバーグはさすがの演技力ですな。
冷静でスマート、でもゴリゴリの武闘派でもある魅力的な犯罪者という感じで、なし崩し的にとはいえ、どこか楽しそうに密輸に挑む姿は中々に格好いいものです。
惜しむらくは、義理の弟が超絶アホ過ぎて魅力を発揮しきれていないこと。
せっかくのキャラクター設計があまり活かせておらず、緻密な作戦も成り行き任せになってしまうのが実に勿体ない。
何かとヒット作に恵まれるマーク・ウォールバーグですが、むしろ彼を活かさないと高い評価は得られないと、もしかしたら扱いの難しい俳優なのかもしれませんね。
特に日本ではあまり身近には感じ得ない「密輸」をテーマに扱っているだけに、貨物船を中心に密輸方法のアレコレが描かれます。
設定上とはいえ、元伝説の運び屋が描く密輸計画は面白いものですし、大量の現金(偽札)をどう運び、どう収めるのかは素直に興味深いものだと思います。
しかし、緻密に練った計画はベタなトラブル&アホな義弟のチョンボで台無しになり、これ見よがしに設定されたタイムリミットで無理やり焦燥感を煽っている印象。
さすがにちょっと無理があるというか、程よい緊張感を無視してのドンパチに突入するので、練りに練った脚本を投げっぱなしているようにも感じます。
終盤は目まぐるしく怒涛の展開が続きますが、コレも本筋からは少々ズレてますしね。
悪党どもが一網打尽になるのは留飲の下がるものではありますが、他ならぬクリス自身も文句無しで悪党なわけで、何とかハッピーエンドにこぎ着けたエンディングも少し気になります。
個人的には様々な作品でちょこちょこと見かける、ジョヴァンニ・リビシが印象的。
すっかり悪党専門俳優になってしまいましたが、コカインの売買に手を付ける悪党でありながらも娘と安アパートで2人暮らしというギャップはちょっと面白かったです。
麻薬をバラまく彼もまた父親であり、食っていくために犯罪に手を染める1人の男であり、何とも言えない哀愁が漂います。
あと超絶アホな弟を演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズも良い味出してます。
どこかで見た顔だと思ったら「バリー・シール」にも超絶アホな弟役で出演してたんすね。
俳優兼ミュージシャンだそうですが、とにかく超絶アホっぽい役がハマり役。
彼以上の逸材はそうそう見つからないんじゃないかと本気で思いますよ。
まとめ
可もなく不可も無く、面白いところもあるし、残念なところもあるし。
終わってみれば何とも平凡な作品ではありますが、やはりキャストの存在感により及第点な出来にはなっているのかなと。
ポップコーン・ムービーとしてはそれなりの完成度だと思います。
というか、邦題の「ハードラッシュ」って何じゃ?
マーク・ウォールバーグ作品はハズレが少ないですしね、誰が観てもそこそこ面白いんじゃないでしょうか。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。